先週当院で、外部委員を委員長とした医療事故調査委員会が開かれた。この医療事故というのは、明らかに医師側に過失があるものもあるが、医師が誠心誠意考え、精一杯の医療提供を行った上での限界として、回避できなかったが故に不幸をまねいてしまったという場合も少なくない。しかし、日常診療において医師は常に正確かつ迅速な判断を求められる。
医師が患者を診療するにあたって、問診、理学所見および検査所見からまず医師自身が何を考え、どのように治療していくかを整理した上で治療を進めていかなければならない。それには、evidence-based medicine(EBM)のステップ4、すなわち、「患者への適応――個別の患者にとって臨床的に意味のある治療かどうかを考える」というプロセスが大事である。医師における治療の決断には介入の転機に関する不確実性を減少させるため、自分が必要とする価値が得られる介入か?(効能)、どの程度の確率で価値が得られる介入なのか?(効果)、代価に値する価値のある介入なのか?(効率)、他の人はどうしているのか?(普及の程度)に関する情報が必要である。
しかし、医師と患者の間には大きな「情報の非対称性」が存在する。すなわち、医療サービスとそのリスクに関する情報の質と量は医師>患者であり、この情報のギャップにもかかわらず医師に身体を預けるためには医師の能力の確かさを患者が実感し、医師を信頼することが必要である。良医とは、簡潔に言えば患者のニーズに全力で応えようと努力してくれると信頼される医師ではないだろうか。