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原発性肝癌(肝内胆管癌)[私の治療]

No.5046 (2021年01月09日発行) P.38

天野尋暢 (JA尾道総合病院外科・内視鏡外科主任部長)

安部智之 (JA尾道総合病院外科・内視鏡外科部長)

田妻 進 (JA尾道総合病院病院長)

登録日: 2021-01-08

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  • 肝内胆管癌は,肝内に発生した胆管上皮に似る,あるいはそれに由来する細胞からなる上皮性悪性腫瘍と定義される。肝内胆管癌は胆管細胞癌とも言われ,原発性肝癌の3~5%を占め,原発性肝癌の中で肝細胞癌につぐ2番目に多い悪性腫瘍であり,近年,その頻度は増加傾向にある。5年生存率は,全国4436例の集計で28.9%(肝切除あり2412例で41.9%)であり,他のがん種と比べ生命予後不良の悪性疾患のひとつである。

    ▶診断のポイント

    組織学的には大多数が腺癌(高分化~低分化)で,胆管上皮に似た上皮で覆われた腺腔を形成し,線維性間質がよく発達しているものが多い。稀に特殊型として腺扁平上皮癌,肉腫様癌,粘液癌,印環細胞癌などがこれに含まれる。一般的なCT所見は,末梢型(peripheral type)では腺癌に特徴的な乏血性腫瘤像で,遅延相で濃染を示すことが多い。傍肝門部型(perihilar type)は腫瘍の胆管壁への浸潤により,末梢側胆管の拡張像を認めることが多い。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    侵襲の少ない検査から進める。画像評価で進行度分類を行い,がんの発生部位を同定する。

    外科治療が第一選択であり,根治が可能な唯一の治療法である。肉眼分類は発生部位や進展様式と深い関係があり,それにより術式が異なる。同時に肝予備能の評価も行い,安全かつ根治可能となる術式を選択する。一方で,切除不能例や進行再発例も多い。肝内胆管癌は原発性肝癌に分類されるが,胆管上皮から発生(発がん)すること,薬剤感受性や合併症が他のがん種と比較して胆道癌と共通する点が多いことなどの理由から,胆道癌の化学療法が一般的に適応されている。放射線療法は,延命(姑息的治療)あるいはステント開存性の維持,減黄,疼痛緩和(対症療法)の目的で選択されることが多い。

    【肝内胆管癌の進行度分類】

    T因子(がん腫の個数,大きさ,血管侵襲・主要胆管への浸潤の3項目で定義),N因子(リンパ節転移の有無),M因子(遠隔転移の有無)で評価する。stage ⅣA以下の肝予備能の保たれた症例が,外科治療の対象となる。

    【肝内胆管癌における発生部位と肉眼的特徴】

    肝内胆管癌の肉眼所見は,腫瘤形成(mass forming:MF)型,胆管浸潤(periductal infiltrating:PI)型,胆管内発育(intraductal growth:IG)型があり,またMF型にPI型の形態を併せ持つ場合(MF+PI型)もある。発生部位から,傍肝門部型と末梢型に分類され,末梢型はMF型の形態を示すことが多く,傍肝門部型はPI型やMF+PI型,IG型の形態を示すことが多い。

    【検査】

    以下の順で検査を進め,治療方針を決定する。

    ①拾い上げ検査

    血液検査:胆管閉塞があれば胆道系酵素(ALPやγ-GTP)の上昇が主となるが,特異的ではない。腫瘍マーカー(CA19-9)の上昇を認めることが多い(胆道癌の69%)。
    腹部US:MF型ではheteroな腫瘤影で,肝表面の陥入像を認めることもある。PI型では胆管壁の肥厚と上流の肝内胆管の拡張を認める。

    ②病変部の詳細な評価

    CT:胆管狭窄部の描出や水平方向進展度診断,血管浸潤の評価が可能である。MF型は動脈相で低吸収,遅延相で腫瘍内部が造影される。PI型は比較的太い胆管から発生し,胆管壁,Glisson鞘に沿って浸潤する傾向にあり,明瞭な腫瘤形成はないが胆管壁の不正肥厚像と,これに連続する末梢胆管の拡張がみられる。IG型は,病変部の胆管は腫瘤が充満し拡張する傾向にある。上流の胆管は拡張し,腫瘤は動脈相で増強,平衡相で低吸収となる。

    MRI(MRCP):病変の局在および進展度診断に有用である。胆管狭窄や閉塞のために直接胆道造影で描出できない胆管枝まで画像化できる。

    ③質的診断,治療方針の決定

    ERCP:水平方向進展度診断に有用であり,細胞診,生検が可能である。
    超音波内視鏡(EUS):質的診断,壁内進展度診断,血管浸潤の判定に有用である。
    PET-CT:リンパ節転移や遠隔転移の検出,術後再発病変の診断に有効である。
    肝予備能検査:肝切除を予定する場合,ICG排泄試験もしくは,99mTc-GSA(アシアロシンチ®注)を用いたSPECT/CT検査で肝予備能を評価する。

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