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ラムゼイ・ハント症候群[私の治療]

No.5051 (2021年02月13日発行) P.43

羽藤直人 (愛媛大学医学系研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科教授)

登録日: 2021-02-16

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  • 顔面神経麻痺,難聴や眩暈などの第Ⅷ脳神経症状,耳介の帯状疱疹を三主徴とする疾患で,顔面神経の膝神経節に潜伏感染していた水痘帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus:VZV)が再活性化することにより発症する。VZVへの特異免疫低下に加え,ストレスや過労,紫外線曝露などによる免疫能の低下を誘引とする場合が多く,高齢者では重篤化しやすい。ラムゼイ・ハント症候群の顔面神経麻痺の自然治癒率は30%に満たない。三主徴すべてがそろうのは60%程度で,顔面神経麻痺だけが出現するZSH(zoster sine herpete)も10~20%含まれる。

    ▶診断のポイント

    顔面神経麻痺,耳介帯状疱疹,第Ⅷ脳神経症状の三主徴がそろえば診断は容易であるが,いずれか2症状のみの場合や,帯状疱疹の発症が他の神経症状から数日前後することがあり,注意を要する。帯状疱疹は耳介を中心とするが,外耳道や頸部,口腔に広がる場合もあり,激痛を伴う。VZV IgM陽性もしくはVZV IgGのペア血清での2倍以上の抗体価変動が参考となる。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    全例に抗ウイルス薬とステロイドの併用投与を中心とした保存治療を行う。発症からの期間と顔面神経麻痺の程度によって,ステロイドの用量を変える。ラムゼイ・ハント症候群の顔面神経麻痺は重症となる場合が多く,また眩暈を伴う症例では入院が必要となる場合が多い。その場合はステロイドの高用量投与を免疫抑制に注意しながら行う。なお,ラムゼイ・ハント症候群への抗ヘルペス薬投与はできるだけ発症早期に行うことが肝要で,発症3日以内,できれば24時間以内の早期投与により顔面神経麻痺や皮疹の重症化を防ぐ。高齢者に対する抗ヘルペス薬投与では腎機能障害に注意する。

    高度顔面神経麻痺症例では電気生理学的診断を行い,electroneurography(ENoG)が10%以下であれば顔面神経減荷手術を考慮する。手術を行う場合には,発症2週以内の早期対応が望ましい。

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