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音声言語障害[私の治療]

No.5056 (2021年03月20日発行) P.39

大森孝一 (京都大学大学院医学研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教授)

登録日: 2021-03-22

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  • 音声(voice)は,呼気により声帯を振動させて音源となり声道(喉頭,咽頭,口腔,鼻腔)を共鳴腔として通過し生成される。子音と母音が構音され連続して生成されて話しことば(speech)となり,この過程を介して言語(language)を表出する。

    音声障害(voice disorder)には,原因として喉頭の形態や組織の異常(声帯結節,声帯ポリープ,ポリープ様声帯,声帯萎縮,喉頭癌),炎症性疾患(急性声帯炎,急性声門下喉頭炎,扁桃周囲膿瘍,急性喉頭蓋炎),全身性疾患,心理的疾患(失声症),神経疾患(反回神経麻痺,痙攣性発声障害),機能性発声障害(変声障害)などがある。

    言語障害には,ことばの意味や内容に異常を認める障害(language disorder)として失語・高次脳機能障害や言語発達障害があり,ことばの音の生成障害(speech disorder)として構音障害,吃音がある。

    ▶診断のポイント

    【症状】
    〈音声障害〉

    粗糙性嗄声(ガラガラ声)では声帯ポリープ,ポリープ様声帯,喉頭癌など,気息性嗄声(かすれ声)では声帯結節,声帯萎縮,反回神経麻痺が考えられる。嗄声に咽喉頭痛を伴えば急性声帯炎,喘鳴を伴えば急性声門下喉頭炎,呼吸困難を伴えば急性喉頭蓋炎,嗄声の発症が緩徐であれば喉頭癌を疑う。含み声(こもった声)では扁桃周囲膿瘍,急性喉頭蓋炎を疑う。上気道狭窄をきたし致死的となることから,見逃してはならない。

    〈言語障害〉

    失語・高次脳機能障害は,脳血管障害や頭部外傷などにより大脳の言語中枢が損傷を受けて生じ,失認,記憶障害,遂行機能障害,注意障害がみられる。言語発達障害では,ことばの入力系の障害(難聴,聴覚失認),中枢性の発達障害(精神発達遅滞,学習障害),ことばの出力系の障害(特異的言語障害)がある。構音障害には,器質的構音障害(構音器官の形態的異常),運動障害性構音障害(脳血管障害,脳腫瘍,神経変性疾患,外傷),機能性構音障害(音の置換や省略,側音化構音や口蓋化構音などの異常構音)がある。吃音では,ことばのつかえ,繰り返し,引き伸ばしがあり,流暢に発語できない。

    【検査】

    最長発声持続時間:10秒以下では異常で,5秒以下では日常生活に支障をきたす。最長発声持続時間が短縮する例は反回神経麻痺,声帯萎縮がある。

    嗄声の聴覚心理的評価:日本音声言語医学会のGRBAS尺度があり,嗄声の程度(G:grade),粗糙性(R:rough),気息性(B:breathy),無力性(A:asthenic),努力性(S:strained)について0,1,2,3のスコアをつける。

    喉頭内視鏡検査:耳鼻咽喉科で行い,音声障害のおよそ7~8割の診断が可能である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    音声障害に対する実地医家としての初期対応は,急性疾患か慢性疾患かを見きわめ,良性か悪性かを想定することが大切である。急性疾患には主に薬物治療,慢性疾患にはがんを除外できれば,一般に外科治療や音声治療〔声の衛生指導(禁煙,大声の禁止,加湿など)や音声訓練〕を行う。
    言語障害に対しては,脳神経内科医,精神科医,小児科医,歯科医,言語聴覚士などと協力して,構音や言語の評価およびリハビリテーションを行う。

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