脊髄小脳変性症は,小脳とその関連する神経系統が徐々に機能障害を起こす変性疾患の総称である。脳梗塞,小脳・脳幹脳炎,多発性硬化症,自己免疫性小脳失調症,ビタミン欠乏などの欠乏・中毒性疾患,傍腫瘍性症候群など,小脳障害をきたす他の疾患を鑑別する。遺伝性と孤発性(家族歴がないもの)の両方がある。多系統萎縮症は,原則孤発性の変性症で,小脳以外に脳幹,基底核,自律神経などの障害も顕著なため,小脳失調のほかにパーキンソン症状,自律神経障害,錐体路徴候など様々な障害をきたす。
脊髄小脳変性症,多系統萎縮症ともに,通常小脳症状によるバランス障害や構音障害(滑舌の不良など)がみられ,徐々に悪化する疾患である。小脳障害を起こす鑑別すべき疾患(上述)が除外されたら,脊髄小脳変性症,多系統萎縮症を念頭に診療する。頭部MRIで脊髄小脳変性症,多系統萎縮症に特徴的な所見が認められれば,より診断精度が増す。詳しくは「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018」1)を参照されたい。
現在,脊髄小脳変性症,多系統萎縮症に対する根本的治療法が開発されつつあるが,いまだ多くの場合は症状に対する対症療法が中心である。
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