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便秘[私の治療]

No.5062 (2021年05月01日発行) P.48

西田有正 (慶應義塾大学医学部救急医学教室)

登録日: 2021-04-30

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  • 「便秘」とは,「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」を言うが,排便習慣には個人差があり,「便秘」を厳密に医学的に定義することは困難である。慢性便秘は「週3回未満の排便回数の減少」かつ/または「排便困難」を呈することと定義されることがある1)
    救急の現場でも「便秘」を主訴に救急搬送されるケースはあるが,比較的急性に発症し,かつ随伴症状(バイタルサインの異常,著しい腹痛,血便,発熱など)を伴う場合には,腸管内・外の器質的疾患が背景にある続発性の便秘を考慮し,バイタルサインの安定化,原疾患の検索や初期治療を優先する必要がある。

    ▶病歴聴取のポイント

    【発症様式】

    「慢性便秘」(おおむね1カ月以上)と「急性便秘」に分類して考える。
    便秘の原因分類として,原発性(腸管の機能的異常が主な原因)と続発性(腸管内・外の器質的疾患,薬剤などが主な原因)が存在する。続発性の急性便秘には早急な治療を要する場合があり,これらを的確に診断する。

    【随伴症状】

    排便の有無だけでなく,腹痛,嘔気・嘔吐,血便,発熱,体重減少,月経異常,性器不正出血などの随伴症状がないかを的確に問診する。

    【その他】

    開腹手術,帝王切開やイレウスの既往歴について問診する。
    便秘の原因となりうる薬剤(オピオイド,向精神薬,抗コリン薬など)の服用や全身疾患(甲状腺機能低下症などの内分泌疾患,神経・筋疾患,アミロイドーシスなど)の有無を問診する。

    ▶バイタルサイン・身体診察のポイント

    【バイタル】

    バイタルサイン異常を1つでも認める場合は,続発性便秘の可能性が高い。バイタルサインの安定化を図るとともに,原疾患の検索を進める。

    【身体診察】

    全身疾患による続発性便秘の可能性も考慮し,腹部診察・直腸診のみならず,全身を診察する。
    高齢者や精神疾患患者においては,器質的異常を伴っていても,圧痛や腹膜刺激症状などの身体所見に乏しい場合があり,注意が必要である。

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