本稿では,「かかりつけ薬剤師」の活動の一環としての訪問活動を述べる。医師である筆者が出会った多くの優れた薬剤師の活動を紹介したい。
一般市民が多少の健康不調を感じたとき,たとえば,風邪をひいたり,かすり傷程度の怪我を受傷したり,下肢を捻挫したりしたとき,医療機関に行く人は少数であろう。多くの人は,まずは薬局あるいは薬店に,薬物や湿布などを求めるであろう。つまり,薬局は最前線の「医療の入り口」である。そして,薬剤師は,医療機関にかかる前の,より「前線」で,健康や傷病に関する相談に応じることになる。
患者の相談を受けた薬剤師は,患者に詳しく問診し,傷病を想定し,必要に応じてOTC(Over-the-Counter)薬を勧めるであろう。しかし,OTC薬では対応できないほどに傷病が重い場合には,適切な医療機関を勧めるであろう。薬剤師は,地域の医師をよく知り,適切な医師を紹介し,受診後は処方薬を自ら調剤するであろう。また,調剤にあたり,必要に応じ,医師の説明を補足したり,適切な療養指導を行うであろう。
つまり,地域の薬局は「医療の最前線」であり,そこでの薬剤師の活動の本領は,患者が「医療機関にかかる前から,かかった後に至るまでの総合的な健康・医療相談に応じ,適切な医療が実施されるようにマネジメントを行う」ことである。このような患者との信頼関係を基盤とする「かかりつけ薬剤師」は,地域医療において重要な活動である。
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