日本老年医学会・日本在宅医学会・国立長寿医療研究センターは「高齢者在宅医療・介護サービスガイドライン2019」1)を作成した。当該ガイドラインは個々の疾病の治療方法をターゲットとしたものではなく,在宅医療・介護サービスの中で行われる治療ならびに様々な地域で展開されるサービスの意義,効果について過去の文献のシステマティックレビューを実施して作成されたものである。6つの重要課題,すなわち
①慢性期医療
②急性期医療
③摂食・排泄障害
④臓器不全,悪性腫瘍
⑤エンド・オブ・ライフケア
⑥その他重要な事項
である。
それぞれに対する在宅医療・介護サービス,合計29個のClinical Question(CQ)について推奨と解説が作成されている。このガイドラインは必ずしも在宅医療・介護サービスの具体的方法を示すものではないが,実践方法のヒントを与えるものであり,それぞれの在宅医療・介護の意義やあり方を示すものとして活用したい。
日本で実践されている在宅医療に関する研究論文は少ない。そのためガイドラインは日本語論文に加え,多くの海外論文をもとに作成された。日本と海外で実践されている在宅医療・介護サービスおよび制度は多くの点で異なる。したがって,ガイドラインがそのまま日常診療・介護に適用できるかどうか慎重に判断する必要がある。
在宅医療を受ける患者・家族の生活様式や価値観は多様である。終末期が近づくにつれて,エビデンスに基づく治療・ケアを行っても,疾患および生命・機能予後の改善に関する不確実性は増す。そのため,科学的な根拠に基づく治療を心がけながら,アドバンス・ケア・プランニング(ACP)に努め,患者・家族の希望を尊重して治療・ケアを実践する。
これらの事項に留意しながら,本ガイドラインで強い推奨が示されている事項は,日常の診療やケアで積極的に取り入れるように努める。
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