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【一週一話】高齢化するHIV感染者

No.4746 (2015年04月11日発行) P.45

味澤 篤 (公益財団法人東京都保健医療公社豊島病院副院長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-21

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  • 抗HIV療法(antiretroviral therapy:ART)の進歩により,HIV感染者の予後は明らかに改善した。米国での報告によると,HIV感染症と診断されてから早期にARTを開始した群の平均余命は非HIV感染者と変わりがないと言われている。筆者が在籍していた都立駒込病院でもHIVに伴う日和見感染症での死亡は減少傾向にある。2010~12年の3年間で死亡したHIV感染者23例中,AIDS関連の日和見感染症および悪性腫瘍による割合は35%にすぎなかった。残りの65%はAIDSと直接関連のない悪性腫瘍(肺癌,大腸癌など)や,心血管障害などが原因であった。しかし,HIV感染者の医学的な問題点がなくなったわけではない。予後の改善とともに高齢化も進んでいる。また,HIV感染症というと若年者の疾患というイメージがあるかもしれない。実際には2013年に厚生労働省に報告されたHIV感染者/AIDS患者の中で,50歳以上の占める割合は30%弱に及ぶ。ARTによる余命延長と高齢化が,HIV感染症の診療に大きな影響を与えつつある。

    近年HIV感染症に伴う長期合併症が話題となっている。これらはARTでコントロールされているにもかかわらず生じてくる。①HIV感染自体,②HIV合併感染症(B型肝炎やC型肝炎など),③HIV感染者のライフスタイル(喫煙者が多い)などが組み合わさって引き起こされると考えられている。糖尿病,脂質異常症,慢性腎臓病(CKD),高血圧,心血管疾患,骨代謝異常,ウイルス性肝炎,悪性腫瘍,精神疾患などが代表的である。しかも,これらは高齢化に伴って生じる合併症とも近似している。したがって高齢化するHIV感染者では,予後改善に伴って問題となる様々な長期合併症に加え,非HIV感染者にみられる高齢化に伴う合併症がオーバーラップしている。今後10年で,事態はさらに深刻化する可能性が高い。

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