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【一週一話】うつ病治療におけるケタミンの効果と 危険性─クロルプロマジンに次ぐ大発見!

No.4753 (2015年05月30日発行) P.51

橋本謙二 (千葉大学社会精神保健教育研究センター副センター長・教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-17

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  • 大うつ病性障害(うつ病)および双極性障害(躁うつ病)の治療には,それぞれ抗うつ薬および気分安定薬が使用されているが,これらの薬剤が奏効しない治療抵抗性患者が存在することから,従来と異なる作用メカニズムに基づく薬剤の開発が必要である。グルタミン酸受容体の1つであるNMDA(N-methyl-D-aspartate)受容体拮抗作用を有し,わが国では麻薬指定されているケタミンは,麻酔薬として世界中で使用されているが,これらの疾患の新しい治療薬として最も注目されている薬剤である。

    2000年に米国イェール大学のグループが,うつ病患者におけるケタミンの抗うつ効果を最初に報告した。麻酔用量よりも低い投与量(0.5mg/kg)を静脈投与すると,大うつ病性障害患者において,数時間以内に抗うつ効果を示し,その効果は3日以上持続した。一方,ケタミンの投与による精神病症状は,2時間以内に消失した。その後,治療抵抗性うつ病患者を対象とした多くのプラセボ対照二重盲検試験においても,ケタミンの即効性抗うつ効果と持続効果は追試された。興味深いことに,ケタミンは自殺願望や自殺念慮にも即効性の効果を示した。さらに,ケタミンは治療抵抗性の双極性障害患者に対しても,即効性の抗うつ効果を示した。双極性障害のうつ病は,治療抵抗性の大うつ病性障害と誤診される場合も多いことから,両疾患におけるケタミンの抗うつ効果は非常に意義がある。

    このようにケタミンの抗うつ効果は,精神疾患の薬物療法の歴史において,クロルプロマジンの発見に次ぐ,大発見とまで言われている1)

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