2019年に家庭裁判所で行われた,遺産分割に係る司法争いを示す“遺産分割調停事件”の件数は1万2785件でした1)。
遺産相続に関するもめごとを防ぐためには,事前に被相続人(遺言者)が「遺言書」を作成することが望ましいものです。
しかし自分で作成する自筆証書遺言は,形式や内容に不備があれば無効になる恐れがありますし,法務局で保管しなければ紛失する恐れもあります。
また,紛失した遺言書が遺産分割協議後に見つかった場合,相続人全員の同意が得られないなどの問題が発生すれば,再協議になる可能性があります。
遺言書は代表的なものとして「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。秘密証書遺言は,内容を相続人等にどうしても秘密にしたい場合に選択されますが,実態としてはほとんど使用されていません。
一般的に遺言書というと,「自筆証書遺言」もしくは「公正証書遺言」のどちらかを選択することが一般的です。
自筆証書遺言は,被相続人が遺言を自筆で書き遺す方法です。作成方法,メリット,デメリットについて簡単にお伝えします。
紙やペンの指定はありませんが,以下の民法第968条に従って書く必要があります。
(第968条)自筆証書によって遺言をするには,遺言者が,その全文,日付および氏名を自書し,これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず,自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部または一部の目録を添付する場合には,その目録については,自書することを要しない。この場合において,遺言者は,その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては,その両面)に署名し,印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除そのほかの変更は,遺言者が,その場所を指示し,これを変更した旨を付記して特にこれに署名し,かつ,その変更の場所に印を押さなければ,その効力を生じない。
つまり,次のことを満たさなければ,自筆証書遺言の内容はすべて無効となるので,作成には注意が必要です。