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転移性肺腫瘍に対する外科治療

No.5073 (2021年07月17日発行) P.46

宮本竜弥 (鳥取大学呼吸器・乳腺内分泌外科)

中村廣繁 (鳥取大学呼吸器・乳腺内分泌外科教授)

登録日: 2021-07-16

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 【適応拡大とともに化学療法などの進歩により求められる役割が変化しつつある】

転移性肺腫瘍は,ある臓器における悪性腫瘍巣から,血行性,リンパ行性,経管腔性の3つの経路を経由して腫瘍細胞が肺に至り,発育する病態とされる。その経過や予後は原発腫瘍の特性が大きく影響する。多くは多発転移や全身状態のため手術適応になりにくいが,集学的治療のひとつとして外科治療の意義を検討する必要がある。

手術適応については,従来Thomfordらの基準が用いられてきた1)。①原発巣が制御されている,②他臓器転移がない,③両側肺転移でない,④耐術可能な全身状態,の4つが挙げられているが,現在は技術の向上とともに両側転移も適応とされ,他臓器転移もたとえば大腸癌では,肝転移巣,肺転移巣をともに切除することで予後改善につながるとの報告がある2)。このように外科治療の適応が拡大されてきた一方で,化学療法や分子標的治療,免疫治療の進歩により,外科治療の役割も大きく変わりつつある3)

転移性肺腫瘍は,基本的に全身疾患であることや多発病変への対応や再手術の可能性から,手術術式は肺機能温存を考慮した縮小手術(楔状切除や区域切除)や,低侵襲の胸腔鏡アプローチが優先される。ただし,根治性を確保するためには開胸アプローチも躊躇すべきではない。

【文献】

1) Thomford NR, et al:J Thorac Cardiovasc Surg. 1965;49:357-63.

2) Kobayashi K, et al:J Thorac Cardiovasc Surg. 1999;118(6):1090-6.

3) Higashiyama M, et al:Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2015;63(6):320-30.

【解説】

宮本竜弥,中村廣繁  鳥取大学呼吸器・乳腺内分泌外科 *教授

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