ある日いきなり,裁判所から訴状が届き,自分の病院が訴えられたことを知る─。
多くの先生はこんな場面に遭遇してしまうと,どうしてよいかわからずに固まってしまうため,すぐに適切な手を打つことが困難になってしまいます。
今回は,「転ばぬ先の杖」として,医療訴訟の際の対応や,弁護士を選定する際の留意点などについてお話しします。
医療訴訟とは,医療行為の適否や,患者に生じた死亡・後遺障害などの結果と医療行為との因果関係,さらにそのような結果に伴って発生した損害の有無および賠償額を主要な争点とする民事訴訟を指します。また,「医事関係訴訟」「医療過誤訴訟」とも呼ばれます。
最高裁判所は「裁判の迅速化に関する法律」(平成15年法律第107号)に基づく検証を定期的に行っており,「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第8回)」(2019年7月19日公表)1)に,医療訴訟についてのデータがまとめられています。その資料によると,医療訴訟の新受件数,平均審理期間の推移は以下の通りです。
医療訴訟は,ほかの訴訟と比較して難しく,また,人証調べ(証人尋問・本人尋問のこと)や鑑定等を必要とすることも多くあるため,平均審理期間は2年程度になってしまうということです。
なお医療訴訟は,和解で終了するものが約5割,判決となるものが約3割強です(表1)1)。