SARS-CoV-2(severe acute respiratory syndrome coronavirus-2)によるウイルス感染症で,主に呼吸器や消化器症状をきたす。小児では,成人に比較して無症状から軽症のことが多い。稀に小児多系統炎症性症候群(multisystem inflammatory syndrome in children:MIS-C)を主に年長児できたす。
地域の流行状況,感染者との濃厚接触歴が重要である。流行下で疑わしい症状がある,もしくは症状がなくても家族内接触などの濃厚な感染機会があれば,原則,核酸増幅検査(PCR,LAMPなど)でウイルス検査を行う。迅速検査は,核酸増幅検査に感度,特異度で劣るが,簡便に短時間で結果が出るメリットがある。
有症状者に対しては,対症療法を行う。発熱や痛みなどに解熱鎮痛薬を使用する。脱水をきたさないように十分な塩分を含む水分摂取を指示する。小児で治療のための入院加療を必要とすることは稀であるが,社会的事情,地域の行政や最新の感染隔離の推奨に従って,在宅や隔離施設,医療施設での経過観察を行う。
循環器や呼吸器などの重篤な基礎疾患,免疫不全のあるハイリスク小児においては,肺炎などの合併症から治療を要することがある。特にバイタルサインの呼吸数,酸素飽和度を確認する。必要に応じて一般血液検査,胸部X線,流行に応じてその他のウイルス検査を行う。RSウイルスなどの混合感染も稀ではない。
12歳以上かつ体重40kg以上のハイリスク小児では,発症7日以内で酸素投与や人工呼吸管理を受けていなければ,重症化予防で中和抗体薬ロナプリーブTM(カシリビマブ・イムデビマブ)の投与が検討される。小児でハイリスクとは,血液腫瘍で化学療法中,造血幹細胞移植後,固形臓器移植後,その他の免疫抑制状態,心不全を伴う心疾患,治療を要する慢性肺疾患,これらに準じる基礎疾患などが対象疾患として考えられる。厚生労働省がロナプリーブTMの供給を管理しており,2021年8月時点では供給が限られている。
酸素投与や人工呼吸管理の必要な新型コロナウイルス肺炎の小児では,ステロイド〔デカドロン®(デキサメタゾン)〕投与を行う。治療期間は,改善がみられるまでの3~5日間程度で最大10日間である。ウイルスによる肺損傷の炎症を抑えることで,重症肺炎や急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS)への進展を防ぐ。
抗ウイルス薬ベクルリー®(レムデシビル)の投与は,新たな酸素需要がある肺炎の小児症例で考慮,人工呼吸管理が必要な呼吸不全の小児症例で推奨とされている2)。小児における安全性や有効性のデータは限られている。ウイルスの複製を阻害することで増殖を抑えるとされるが,成人での有効性も評価がわかれている。ウイルス性肺炎が進行した重症肺炎では,ベクルリー®の効果は期待できないが,発症初期であれば効く可能性があるかもしれない。特に発症7日以内の酸素需要がある肺炎のハイリスク小児例で考慮される。
成人の重症例では,炎症による血管内皮の損傷から血栓症の合併症がある。小児の全身管理を要する重症例,Dダイマー高値(正常上限の3~4倍),血栓症のリスクがある場合は,抗凝固療法を行う。
小児の重症例でインターロイキン-6阻害薬アクテムラ®(トシリズマブ)の使用経験はきわめて限られており,安全性や有効性のデータは少ない。投与適応は慎重に判断する。多臓器にわたる炎症を伴うMIS-Cが疑われる小児では,全身管理とともにガンマグロブリン,ステロイドの使用が考慮される3)。
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