掌蹠に大小の水疱性病変を生じる疾患で,異汗性湿疹(dyshidrotic eczema)・汗疱(pompholyx)は同義として扱われることも多い。欧米では,ともに小水疱性掌蹠皮膚炎に包含され,臨床的に汗疱,異汗性湿疹,慢性角化性手湿疹,id反応,の4型に分類される。汗疱は春や秋に好発し,掌蹠に大小の水疱を生じる急性病変で,異汗性湿疹は慢性に経過する手指側面の小水疱を特徴とする。病理組織学的には,いずれも,海綿状態を伴う表皮内水疱を特徴とする湿疹反応を示す。なお,無症状で径数mm大までの環状鱗屑を掌蹠に付着する状態を特に汗疱と呼ぶことがある。精神的ストレスや金属アレルギー等,種々の因子が関与する病態が示唆されている。汗管との関連性は必ずしも明らかになっていないが,汗の排泄障害に伴う汗管周囲の炎症反応が病態に関与する可能性がある。免疫グロブリン大量静注療法や乾癬に対するIL-17阻害薬投与により,異汗性湿疹を生じることがある。
①感染症(小水疱型白癬,特に乳児疥癬),②id反応,③自己免疫性水疱症,④掌蹠膿疱症など,掌蹠に水疱を呈する疾患との鑑別が特に重要である。②については,足白癬等の真菌感染症を併発することが多く,①同様,鏡検により感染症の有無を確認する。また,病理組織検査,血中自己抗体(抗BP180抗体)の有無により,③④等を鑑別する。④では,特に母指球,小指球,土踏まずに皮疹が好発し,異汗性湿疹との鑑別において参考になる。
湿疹病変に対する局所療法が基本である。並行して,金属アレルギー,多汗,接触アレルゲン等の病因,悪化因子のスクリーニングと除去を行う。難治性皮疹に対しては紫外線療法が有効な場合がある。掌蹠多汗には水道水イオントフォレーシスを試してもよい。原則として,ステロイドや免疫抑制薬の内服は短期間にとどめる。皮膚のバリア障害が湿疹病変の悪化因子となりうるため,保湿剤の外用も適宜併用する。全身型金属アレルギーを基盤として汗疱・異汗性湿疹を生じることがあり,難治例では歯科金属を中心にパッチテストによるスクリーニングを行い,必要に応じて,歯科金属等の除去を行う。
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