日本集中治療医学会が、9月13日、「我が国の集中治療医療提供体制を強靭化するための提言」を出した。パンデミック下でも医療崩壊を防ぎ、集中治療医療提供体制を強靭化するにはどうすればよいのか。同学会理事長で藤田医科大学麻酔・侵襲制御医学講座主任教授の西田修氏に聞いた。
新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)パンデミック下では、地域によっては医療崩壊と呼ばれるような状態になり、我が国の集中治療医療提供体制の脆弱性が浮き彫りになりました。何しろ、人口10万人当たりのICU病床数は、OECDのうち、データがある22カ国の平均が12床であるのに対し、日本は5.6床と非常に少ない。
実際に医療崩壊が起こり、新型コロナの死亡率が11.7%(20年3月末時点)だったイタリアの10万人当たりICU病床数は12床です。我が国の新型コロナ死亡率は諸外国より低く抑えられているものの、イタリアより悲惨なオーバーシュートが起こってもおかしくない状況だったということです。
一方、10万人当たりICU病床数が29~30床のドイツの死亡率は1.1%(20年3月末時点)。ドイツが死亡率を低く抑えられたのは、11年のSARS(重症急性呼吸器症候群)発生を受けて、国立の感染症研究所がパンデミックを想定した計画を策定してPCR検査体制を強化し、ICUを増床したからです。
こうした事実を受け、私は、昨年3月の「新型コロナ対応に関する医療関係団体及び厚生労働省による協議会」をはじめ、厚生労働省や関係団体に、国民の命を守るためには集中治療を崩壊させないことが重要だと強調してきました。
そうした中、新型コロナの感染拡大を踏まえた改正医療法により、医療計画に、「新興感染症などに備えた医療」が入ることになりました。今回提言を出したのは、2024年から始まる第8次医療計画の策定も見据え、パンデミックに備えた効率的な集中治療医療提供体制をオールジャパンで計画的に作る必要があると考えたからです。