成人期早期までに始まる,対人関係,自己像,感情などの不安定性および衝動制御の困難を主な特徴とするパーソナリティ障害で,明らかに女性に多い(男女比=1:3)。自然軽快傾向があり,治療を受けなくとも40歳くらいで約半数が診断基準を満たさなくなるが,これは主として衝動行為が減るためであって,種々の不安定さは継続することが多い。
青年期または成人期早期の患者が,①自己像の不安定さを背景に漠然とした不全感や空虚感,虚無感,抑うつ感を訴え,経過の中で,②不安定な対人関係(理想化と脱価値化の繰り返し,見捨てられ不安に基づく激しいしがみつき,自殺の脅しによる関心やケアの引き出し)と,③衝動的な自己破壊行為(手首自傷,過量服薬,性的乱脈,アルコールを含む薬物やギャンブルへの嗜癖)とを不特定多数の場面で呈する。
心理検査を施行すると,ウェクスラー成人用知能検査などの構造化された検査では通常の合理的な反応を示すのに対して,ロールシャッハテストなどの構造化されていない投映法検査において,非合理的,逸脱的な退行的反応を示すことが多い。
本障害の治療で最も重要なのは,10~20歳代の衝動制御が不良な時期に「うっかり」死んでしまうことを防ぐことである。安定した治療関係を長期間維持することは,そのことに寄与する。
気分安定薬,SSRIなどの抗うつ薬,もしくは少量の抗精神病薬が対症的に用いられるが,いずれも保険適用外の使用となる。その旨を十分に説明した上で,意図した効果が認められない場合には長期投与しない。ベンゾジアゼピン系薬剤は,依存性および脱抑制による衝動性増加の問題があるので使用を控える。特にエチゾラムの安易な使用は避ける。
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