自己免疫性膵炎(autoimmune pancreatitis:AIP)は閉塞性黄疸などで発症し,膵腫大や腫瘤を形成する特殊な膵炎である。原因は不明であるが,発症に自己免疫機序の関与が疑われており,ステロイドが著効する。1型AIPと2型AIPの2亜型に分類され,わが国では大部分が1型である。
画像所見(膵腫大,主膵管の不整狭細像),血清学的所見(高IgG4血症),病理組織所見,膵外病変の有無などから総合的に診断する。わが国で大部分を占める1型AIPは,「自己免疫性膵炎臨床診断基準2018」1)に基づいて診断する。国際コンセンサス診断基準(International Consensus of Diagnostic Criteria:ICDC)2)では1型AIP,2型AIPの診断が可能である。膵癌と鑑別が難しい場合があるので,注意を要する。
1型AIPに特徴的な症状はなく,無症状例も多い。有症状例では閉塞性黄疸,腹痛,背部痛,体重減少など非特異的な臨床症状を呈する。腹痛や背部痛はあっても軽度であることが多い。一方,2型AIPでは腹痛の頻度が高く,急性膵炎で発症することもある。
血中膵酵素,肝胆道系酵素,総ビリルビン値の上昇を認めることが多い。高IgG4血症は,1型AIPにおいて高頻度に認められ診断価値が高いが,疾患特異的なものではない。
腹部超音波検査やCT,MRI検査で“ソーセージ様”と呼ばれるびまん性膵腫大や限局性膵腫大を呈する。限局性腫大は膵癌との鑑別が重要である。ダイナミックCT,MRIにおける被膜様構造(capsule-like rim)は,AIPに比較的特徴的な所見と考えられている。磁気共鳴胆管膵管撮影(MRCP),内視鏡的逆行性膵管造影(ERP)において,主膵管の不整狭細像がびまん性もしくは限局性に認められる。
1型AIPでは著明なリンパ球・形質細胞浸潤,IgG4陽性形質細胞浸潤,花筵状線維化,閉塞性静脈炎を組織学的特徴としている。2型AIPでは膵管上皮への好中球浸潤を特徴とする。
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