ギッテルマン症候群(Gitelman syndrome)は低カリウム血症,代謝性アルカローシスなどを特徴とする先天性の遠位尿細管機能障害による症候群である。バーター症候群(Bartter syndrome)とともに1つの疾患概念ととらえることが一般的であり,遺伝性塩類喪失性尿細管機能異常症(salt-losing tubulopathy)と称される1)2)。
病態としては,Na+-Cl-輸送体NCCTをコードする遺伝子であるSLC12A3の異常により発症する。遺伝形式は常染色体劣勢遺伝形式であり,有病率は4万人当たり1人とされている3)。
バーター症候群に比し症状は軽度である。低カリウム血症,代謝性アルカローシスに加え,低カルシウム尿症,低マグネシウム血症を伴う。幼少期より多飲多尿を認め,年齢が高くなっても夜尿が続いていることや疲れやすいなどの不定愁訴も診断の参考となる4)。保険適用外であるが,遺伝子診断で確定診断が可能である。
遺伝子異常に伴う先天性疾患であり,電解質補充による対症療法が中心である。第一にカリウム(K),マグネシウムの補充を行い,補充は一生涯にわたる。電解質補正の手段としてカリウム製剤,マグネシウム製剤,抗アルドステロン薬,アンジオテンシン変換酵素阻害薬などの投与を行う。
代謝性アルカローシスを呈しているため,カリウム製剤は無機カリウム製剤(塩化カリウム)を使用する。血清K値の上昇はアルドステロン分泌を促すため,アルドステロン拮抗薬であるスピロノラクトンを併用する。
マグネシウム製剤としては塩化マグネシウム,硫酸マグネシウム,アスパラギン酸マグネシウムが推奨されている。わが国の製剤としては,硫酸マグネシウムやアスパラギン酸マグネシウムとアスパラギン酸カリウムの配合剤が使用される。水酸化マグネシウムの配合剤に関しては,アルミニウムを含有するため長期の使用には注意が必要である。酸化マグネシウム製剤も使用可能であるが,下剤としての作用があるため,下痢による低カリウム血症の増悪に注意が必要である。
日常生活に影響を及ぼすほどの全身倦怠感,めまい,筋力低下などの症状を認める場合は,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服が有効である。NSAIDsは長期内服による腎障害の出現に注意が必要である。
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