構音障害は,構音操作を獲得する過程で生じた機能性構音障害と発生発語器官の形態的異常による器質性構音障害にわかれる。機能性構音障害は,構音器官や聴覚に明らかな異常はみられず,構音の誤りが定着している状態である。器質性構音障害には,口蓋裂や先天性鼻咽腔閉鎖機能不全などの先天的なものと舌切除などの後天的なものがある。
置換や歪みなどの構音の誤りは正常構音を獲得する際にもしばしばみられることがある。構音障害と診断するためには,年齢,言語発達,運動発達などの発育状態を十分に考慮する必要がある。以下に診断基準項目を挙げる。
①構音器官の形態,機能に異常がない。
②正常範囲内の聴力がある。
③言語発音がおおむね4歳児レベル以上である。
④音の誤りが固定化している。
先天的なものとして鼻咽腔閉鎖機能不全をきたす先天性鼻咽腔閉鎖機能不全症,粘膜下口蓋裂,口蓋裂,唇顎口蓋裂,舌の可動不良となる舌癒着症(舌小帯短縮症)などがある。また,後天的なものとして口腔癌や舌癌などがある。口腔内の評価および鼻咽腔閉鎖機能検査,言語評価を行う必要がある。
鼻咽腔閉鎖機能検査と言語評価には様々な方法があり,聴覚的判定,ブローイング(吹き出し)検査,鼻息鏡による呼気鼻漏出検査,セファロX線検査,鼻咽腔ファイバー検査などがある。また,歯列不正や口腔機能の一部欠損による代償性の言語なのかを十分に判断する必要がある。これらを総合的に判断し,機能性構音障害(代償性の構音異常も含める)には言語訓練を行い,鼻咽腔閉鎖機能不全が存在する場合には,スピーチエイドや再口蓋形成術,咽頭弁形成術などの計画を立てる。
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