歳を重ねると自施設の若い先生方の指導のみならず、学会の委員会活動や医学雑誌の論文査読など、時間に追われる日々である。そのような中、本原稿の執筆依頼がきた。私が提示するのは、誤解をまねいてはいけないので記載するが、私が直接関わった症例ではなく、かつ現在私が勤務している病院での症例でもない。ただ、どうせ自分の時間を割くだけでなく、本原稿をお読みになる先生方の時間を少しでも頂くのであれば、この機会に目にしておけば今後の医療に少しでも役に立つようなものにしたほうがいいのではないか、との思いから症例を提示させて頂くこととした。
私自身は救急医として、またある期間は麻酔科医としても臨床研修を重ね、“気道”は専門分野のひとつである。20年間近く取り組んできたが、いまだに気道緊急はヒヤヒヤするし、ドキドキもする。昔より今は様々なデバイスが発達して、そもそも気道緊急は起こらないように未然に防がれるようになってきた。ビデオ喉頭鏡とかカプノグラフィーなどはすばらしいデバイスである。ただ、そのような整った状況では、失敗した時にどうリカバリーしたらよいのか、あるいは失敗したことに気づくことができるかどうか、また昔とは違った問題に直面していると言える。
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