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掲示していないし,書いてないじゃないか![病院トラブル─事務方の解決法(5)]

No.5104 (2022年02月19日発行) P.62

大江和郎 (元東京女子医科大学附属成人医学センター事務長)

登録日: 2022-02-21

最終更新日: 2022-02-15

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医療機関では,来院した方に情報提供するためにたくさんの情報を掲示していますが,限られたスペースで必要な情報が十分に掲示されていないことがあります。患者が掲示物に気づかなかった場合に,どういった対応をすべきでしょうか。

 患 者 :先日退院した患者の親族ですが,本日はカルテ開示請求の依頼に来ました。

 事務員 :大変恐縮ですが,カルテ開示については患者本人か,または本人の委任状を持参した方でないと開示できません。

 患 者 :なんでですか!掲示板を見ても,誰に開示できるのか,料金や開示手順も掲示されていないじゃないですか!

 事務員 :来院前に問い合わせいただければよろしかったのですが……。

 患 者 :わざわざ遠方から来たのに対応が不親切だ!続柄を表す書類って何なんだ!? 納得いく説明を聴くまで帰らないぞ!

正しい対応はどちら?

①院内の掲示がわかりづらく,大変申し訳ございませんでした。今回は処理させていただきますので,お待ちいただけますでしょうか。次回以降は委任状と,患者との続柄を証明する書類をお持ちください。

②遠方からお越しいただきましたところ申し訳ございませんが,個人情報保護法により,ご家族を含め,ご本人以外の方がカルテ開示を希望される場合は委任状などの書類が必要となります。掲示物につきましては,早急に改善させていただきます。

事務長の見解

個人情報保護法をはじめ,医療従事者だけでなく,患者も守らなければならない規則やルールも数多くあります。病院内のルールであれば,最悪,ケース・バイ・ケースで対応することもできますが,法律などの場合は当然,病院の都合で変更することはできません。②のように,掲示の仕方についてはお詫びをしつつ,法律に従って対応をしましょう。

詳しく解説すると……

1. 聞いていない・書いてない

2005年4月に個人情報保護法が全面施行されてからは,個人情報の取り扱いを受付など見やすい場所に掲示している病院が増えました。一方で,病院・医療業務に関係する法律や条例・規則などは多数あり,細かなところまでは掲示できていない場合も多いと思います。「聞いたことがない規則には従わない」「自分がわかるところに明示されていないから知らない」という方も少なくなく,トラブルの原因となっています。






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