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特集:コロナ治療におけるステロイド─抗炎症療法としての位置づけ

No.5104 (2022年02月19日発行) P.18

田中希宇人 (日本鋼管病院呼吸器内科医長)

登録日: 2022-02-15

最終更新日: 2022-02-15

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2005年慶應義塾大学医学部卒業。大学病院および関連病院での勤務を経て,2009年慶應義塾大学医学部呼吸器内科,2021年から現職。呼吸器内科医としてコロナ診療に携わる傍ら,ブログやTwitter(@cutetanaka)で医療情報発信を行っている。

1 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の現状
・2020年1月に新型コロナウイルスが日本に上陸した。
・当初は敵の正体も不明,エビデンスのある薬もない状況だった。
・この2年間で世界中から多くのエビデンスが集まり,医療者サイドも効果の高いワクチンを接種して対応しているという現状である。
・もちろん今後も,「デルタ株」「オミクロン株」のように,変異を繰り返す強敵に対して油断はできない。
・COVID-19治療薬のひとつであるステロイドについて,エビデンスと実臨床の経験をふまえて解説する。

2 COVID-19に対する標準治療
・COVID-19に対する薬剤の検討は世界中で進んでおり,レムデシビル,バリシチニブ,カシリビマブ/イムデビマブ,ソトロビマブ,モルヌピラビルの5種類が2022年1月18日現在,COVID-19に対して日本国内で承認されている。
■レムデシビル:RNA依存性RNAポリメラーゼ阻害薬。肺炎像のある「中等症Ⅰ」以上のCOVID-19症例に,5日間投与することで臨床的な症状の改善が見込める。
■バリシチニブ:JAK阻害薬。レムデシビル投与下で酸素投与が必要な「中等症Ⅱ」以上のCOVID-19症例に,14日以内,バリシチニブを投与することで臨床的な症状の改善が見込める。
■カシリビマブ/イムデビマブ:中和抗体薬。重症化リスクのある酸素投与が不要な「軽症」「中等症Ⅰ」のCOVID-19症例に,症状発現から1週間以内の単回投与で入院や死亡を抑制する。ただし,オミクロン株に対する投与は推奨されていない。
■ソトロビマブ:中和抗体薬。重症化リスクのある酸素投与が不要な「軽症」「中等症Ⅰ」のCOVID-19症例に,症状発現から1週間以内の単回投与で入院や死亡を抑制する。オミクロン株に対しても有効性が期待できるとされている。
■モルヌピラビル:RNAポリメラーゼ阻害薬。重症化リスクのある酸素投与が不要な「軽症」「中等症Ⅰ」のCOVID-19症例に,症状発現から5日以内に内服を開始することで入院や死亡を抑制する。
・上記の5種類以外にも,ステロイドや抗凝固薬,非薬物療法についても知見が集積しており,標準治療につき簡単に概説する(2022年1月21日,抗IL- 6受容体抗体であるトシリズマブが中等症Ⅱ以上のCOVID-19症例に対して追加承認された)。

3 コロナ治療におけるステロイド
・COVID-19は全身性の炎症反応から,広範な肺障害や多臓器不全を起こすことがあり,抗炎症薬としてステロイドが使用される。
(1)デキサメタゾン
・デキサメタゾンが標準治療に比べ死亡率を減少させたことから,酸素投与が必要な「中等症Ⅱ」以上のCOVID-19症例に対する標準治療となっている。
(2)その他の全身性ステロイド
・デキサメタゾン以外にも,メチルプレドニゾロンや,強力なステロイド治療としてステロイドパルス療法でCOVID-19症例に対する効果を検討した報告がある。
(3)吸入ステロイド
・シクレソニドやブデソニドなどの吸入ステロイドによるCOVID-19症例に対する効果を検討した報告があり,シクレソニドは肺炎増悪率が高かったと結論づけられたが,ブデソニドは症状回復までの時間を短縮させた。

伝えたいこと…
・酸素投与が必要なCOVID-19症例に対して,ステロイド治療は重要な選択肢となりうるが,そうでない症例に関しては逆効果になることもありうる。当然のことであるが,COVID-19というだけで機械的に治療法を選択するのではなく,ステロイドが必要な症例の選択,投与開始日や投与期間,副作用の管理,その他のCOVID-19治療薬の選択など,症例ごとに繊細かつ十分に検討されるべきと考える。

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