耳小骨奇形は,耳介や外耳道などの外耳奇形,あるいは全身性の複合奇形に合併することがあり,遺伝性を有し家族性に発症するものもある。症状は難聴であるが,一側性の場合や,軽度の症例では両側性でも患者本人が気づいていない場合がある。手術により聴力改善が大いに期待できる疾患であり,奇形のタイプに合わせて適切な術式をとることが重要である。
難聴の存在に気づくことが重要である。一側性の場合や難聴の程度が軽度~中等度では,成長するまでその状態を当たり前として生活することになるため,自覚することが少ない場合もある。新生児聴覚スクリーニング検査や学校健診,あるいは進学や就職・転職などの環境の変化などをきっかけに難聴を自覚することが多い。
顕微鏡にて丁寧に鼓膜を観察する。外耳道狭窄や鼓膜所見に異常を認める場合は,耳小骨奇形の形態も複雑で,難聴も高度であることが多い。
純音聴力検査では伝音難聴あるいは混合難聴を呈する。全周波数に気骨導差を有する水平型の聴力像であれば耳小骨連鎖に離断が,主に低音域に大きな気骨導差を認めるstiffness curveであれば耳小骨のいずれかに固着病変が存在すると推察する。
ティンパノグラムでは,耳小骨離断症例でAd型に,固着症例でAs型になることが多いが,一致しない例も多く補助的な手段だと考えておく。耳小骨筋反射では多くの症例で反応が消失する。しかし,奇形の型を予想するのには有効でない。
高分解能CTを用いて詳細に耳小骨形態を確認する。可能なら通常の軸位断,冠状断に加えて,MPR画像も確認する。アブミ骨の前後脚に平行なスライスのMPR画像は,アブミ骨の形態およびキヌタ・アブミ関節の状態を確認することに役立つ。アブミ骨底板の固着を予測することは難しい。耳小骨奇形は,時に顔面神経の走行異常を合併するため,その走行にも注意する。
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