2021年12月末日、2021年最後の執刀となる患者に対して、外来で手術説明をしていた時であった。手術説明が終わった時に私とほぼ同年齢の患者さんが言った。「先生が私の立場だったら手術受けますか?」私は、はっとした。一瞬、自分ならどうするかと考えたが、即答した。「受けますよ。だって、これこれこうで……」手術の必要性を再度説明した。しかし、自分は本当にそう思っているのか?と、返答してから自問自答した。「自分なら手術は受けません」とは到底言えなかった。患者さんが診察室を出ていってから再度考えてみたが、やはり自分でも手術を受けるだろうと思い、何となくほっとした気持ちになった。
「自分が患者の立場だったらどうするか」、「自分の家族が患者だったらどうするか」。多くの医師がそう思って診療に携わっていると思う。少なくとも医者になったばかりの頃は先輩からもよくそう言われ、自分もそう思うようにしていた。患者さんから「先生が私の立場だったら手術受けますか?」と言われ、はっとしたのは患者のことを本当に考えているのか、と感じたからに違いない。痛みがあまりなく、忙しい仕事を休んで手術を受けるほど困っているのか、その必要性があるのか、などを真剣に自分は考えていたのか。
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