日本胸部外科学会(理事長=大北裕神戸大教授)は13日、全国の医療機関に行った胸部外科の手術成績に関する2014年度アンケート調査の結果を発表した。多くの術式で症例数の違いによる死亡率の施設間格差がほぼ見られないことが判明した。
同学会は胸部外科手術に関する調査を1986年から毎年実施。調査対象は①心臓大血管外科、②呼吸器外科、③食道外科の3領域で、いずれも回答率は96%を超えた。今回は、2009〜14年の5年間における施設の平均年間症例数と手術死亡率について、施設間格差の有無を解析した。
症例数を5分類して解析した結果、多くの手術(乳児開心、成人心臓大血管外科、冠動脈バイパス、単独単弁、肺がん、食道がん)で症例数と死亡率におおむね差がないことが判明。ただ、A型大動脈解離については、症例数が最も少ない施設群(3例以下)の死亡率は10%を超えたが、症例数が最も多い施設群(14〜74例)の死亡率は7%で、経験による差がみられた。
同学会の益田宗孝学術委員長は、A型大動脈解離は患者によって病状が大きく異なり、症例数が少ない施設の術式、患者の状態まで分析できていないことを説明した上で、「同疾患は発症24時間以内に手術をしなければならず、事前に手術の予定が立たないので、1つ1つの教育が難しい面がある」と格差の一因を分析。一方で、「日本全体の死亡率は8%で、海外と比較するとかなり低く、米国の半分。死亡率も年々減少している」と述べ、さらなる死亡率低下に期待を示した。