腱板は肩を動かす回旋筋群で,4つの筋肉(棘上筋,棘下筋,肩甲下筋,小円筋)に腱が連続し上腕骨に付着する部分である。外傷性に断裂する場合もあるが,加齢とともに腱の変性により断裂が生じる場合が多く,60歳以降では有病率が高い。断裂しても痛み等を伴わない無症候性の腱板断裂を認める一方,夜間痛,動作時痛,挙上障害が出現することが多い疾患である。
診察上,挙上時の痛みや肩を挙上する筋力の低下,夜間痛,安静時痛の有無を確認する。最終的には超音波やMRI像で腱板断裂の有無を確認する。
まずは保存加療を行う。内服薬,注射,リハビリテーションを組み合わせて治療を行うことにより改善する場合も多い。腱板断裂では夜間痛や安静時痛を伴う場合も多いため,内服薬で痛みをコントロールする。一方,動作時の痛みや夜間痛・安静時痛に対する注射療法は,直接患部に局所麻酔薬,抗炎症薬を投与するため効果が高い。また,肩甲骨の位置や姿勢によって痛みが生じている場合,リハビリテーションにより,機能を整えることで症状が改善することも多い。上記3つの組み合わせをまずは施行する。しかし,保存加療で症状の改善が得られない場合,手術を施行する。
①保存加療で夜間痛や安静時痛が改善しない場合
②肩を挙上するときや捻り動作での痛みが軽減しない場合
③挙上での筋力が改善しない場合
④若年者の比較的大きい断裂(自然治癒が得られないため)
⑤肩の挙上がまったくできない偽性麻痺肩の場合
上記の場合手術を勧めるが,最終的には患者のニーズにより決定する。手術をするにあたり,MRIで腱板筋の脂肪変性の程度を評価する。断裂している腱板は機能がないため,時間経過とともに筋の脂肪変性を生じる。また,一度脂肪変性が生じた筋は改善せず,腱板を修復しても再断裂する危険性が高いため,単純な鏡視下腱板修復術では対処困難なときもある。その場合は,年齢や筋の状態を考慮して大腿筋膜を移植する上方関節包再建術,腱移行術,リバース型人工肩関節置換術を検討する。
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