急性咽頭・扁桃炎は,小児期に最も多い疾患である。悪寒・発熱・咽頭痛・嚥下痛を主訴とする咽頭および扁桃の急性炎症性疾患であり,急性炎症が咽頭全体にまで進展し,咽頭粘膜や後壁のリンパ瀘胞に炎症が起こっている状態と定義される。急性扁桃炎は急性咽頭炎に含まれ,炎症はしばしば2つの領域に及び,急性咽頭・扁桃炎(acute pharyngotonsillitis)と表記されるが,ここでは扁桃炎について解説する。
口蓋扁桃は,経口的に直接観察することが可能であり,扁桃が発赤腫脹しており,膿栓,白苔が付着していれば急性扁桃炎と診断できる。一般的にはウイルス感染で発症し,二次的に細菌感染症に移行することが多い。
耳鼻咽喉科領域においても他科同様,特に肺炎球菌,インフルエンザ菌の耐性化が進んでおり,耐性化を食い止めるために,抗菌薬の適正使用が推奨される。薬剤の抗菌活性とともに体内動態の特徴を十分に理解し,抗菌薬が最も有効に安全に働くよう使用することが最も重要である。
急性扁桃炎の分離菌頻度の年次推移をみると,いわゆるα溶血性連鎖球菌を中心とする口腔内常在菌群が半数近くを占めているが,これらはすべてが真の起炎菌とは考え難く,多くはウイルス感染である。細菌性急性扁桃炎では,A群β溶連菌が最も重要であり,その他では黄色ブドウ球菌,肺炎球菌等のグラム陽性菌感染やインフルエンザ菌,カタラーリス菌などのグラム陰性菌あるいはFusobacteriumも起炎菌として検出される。
残り1,377文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する