株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

特集:見逃さない! 鼻の痛み・つまりに潜む疾患

No.5109 (2022年03月26日発行) P.18

寺田哲也 (大阪医科薬科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科准教授アレルギーセンターセンター長)

登録日: 2022-03-25

最終更新日: 2022-03-23

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

1992年大阪医科大学卒業。米国UCLA Clinical Immunology and Allergy留学。2014年より大阪医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科准教授。2021年より現職。鼻アレルギー,鼻副鼻腔疾患と頭頸部腫瘍疾患の領域を専門とする。

1 痛み,鼻閉をきたしうる疾患のイメージを持つことが重要
・鼻副鼻腔に痛みや鼻閉をきたす疾患の理解には,解剖学的理解が必要。
・「頰部の自発痛や叩打痛→上顎洞の炎症」など,各疾患に特徴的な痛みの部位を把握し,診断に役立てる。
・鼻閉をもたらす4つの原因:①鼻茸が存在する,②下鼻甲介粘膜がアレルギー性鼻炎で腫脹している,③腫瘍が存在する,④鼻中隔が高度に弯曲している。

2 急性副鼻腔炎と慢性副鼻腔炎の疾患概念を理解する
・急性副鼻腔炎:感染により副鼻腔に炎症が起こり,膿汁の流出などを認めるもの。
・鼻茸が存在≒慢性副鼻腔炎。
・慢性副鼻腔炎には好酸球性と非好酸球性が存在し,治療方針が大きく異なる。

3 好酸球性副鼻腔炎の診断に鼻内内視鏡,CT,血液検査は必須か
・好酸球性副鼻腔炎の特徴的な病歴や臨床症状から診断を進めることは可能。
・鼻内内視鏡:両側性の多房性鼻茸。特徴的CT像:篩骨洞優位の炎症所見。血液検査:末梢血中好酸球数の増多。

4 アレルギー性鼻炎の病態と薬物治療の基本を理解する
・アレルギー性鼻炎は,Ⅰ型アレルギー疾患であり,type 2炎症性疾患である。
・症状に応じて薬剤を使いわける。

5 臨床現場ですぐに使える診察や治療のコツ
・アレルギー性鼻炎による粘膜病変は,下鼻甲介のみで起こると考えてよい。下鼻甲介粘膜の色調,鼻や眼のかゆみ,ハンセル染色から診断する。
・好酸球性副鼻腔炎のアタリをつけることは,非耳鼻咽喉科医にも可能。特徴的な症状に注目する。

6 鼻の痛み,鼻閉を訴える患者診療のトリアージ
・がんを見落とさないよう,精査を怠らない。痛みを訴える患者の診察では,上顎癌を見抜くため,歯齦部の圧痛の有無の確認を行うことが重要。
・鼻閉のみを訴える場合,鑑別の中心は慢性副鼻腔炎,アレルギー性鼻炎,鼻中隔弯曲症である。嗅覚障害,成人発症の喘息,鼻や眼のかゆみ,下鼻甲介粘膜の所見から鑑別診断を行うスキルが求められる。

7 専門医への紹介の判断
・①鼻茸を持つ副鼻腔炎(特に好酸球性副鼻腔炎を疑う場合),②悪性疾患を疑う場合,③治療抵抗性の症状を認める場合,④手術が必要な場合,⑤確定診断が困難な場合,は専門医に紹介する。
・鼻内内視鏡検査や生検等の検査を経て初めて確定診断ができる場合もある。

伝えたいこと…
鼻の痛みやつまりは,がんなどの重大な疾患によって引き起こされる場合があることを理解した上で鑑別を進めていく必要がある。好酸球性副鼻腔炎は特徴的な臨床症状から,アレルギー性鼻炎も下鼻甲介の観察のコツを習得することで,非耳鼻咽喉科医でも鑑別を進めることが可能である。

プレミアム会員向けコンテンツです(最新の記事のみ無料会員も閲覧可)
→ログインした状態で続きを読む

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top