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疥癬[私の治療]

No.5112 (2022年04月16日発行) P.49

浅井俊弥 (浅井皮膚科クリニック院長)

登録日: 2022-04-15

最終更新日: 2022-04-12

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  • 疥癬はヒゼンダニの感染によって生じる皮膚疾患で,激しいかゆみを伴うことが特徴である。高齢者に多く,特に高齢者施設での集団感染を経験する。皮膚炎に対する標準的治療(抗ヒスタミン薬内服・副腎皮質ステロイド外用薬)で改善しない場合には,常に疥癬を念頭に置き,以下のような診察と検査を進める必要がある。

    ▶診断のポイント

    疥癬の診断で最も重要なことは,ヒゼンダニの寄生を証明することである。したがって,ヒゼンダニが潜んでいる皮膚病変を見出す必要がある。通常の疥癬に特徴的な皮膚病変は「疥癬トンネル」と称される,雌の成虫が角層内に潜って線状ないし曲がりくねった角化性の数mmの発疹で,手掌や手指に認められることが多いため,手の診察をしっかりと行うことが重要である。そのほか,足蹠,腋窩,側胸部,臀部などに生じることもあるので,全身をくまなく診察する必要がある。また,男性の陰囊に生じる小結節からもヒゼンダニの検出率が高い。

    診断の遅れ,あるいは患者が免疫不全状態にある場合など,寄生するヒゼンダニの数が著増すると,角化型疥癬と呼ばれる状態になる。手掌,足蹠の厚い鱗屑,肥厚した爪にきわめて無数のヒゼンダニが検出される。

    以上のような典型的な皮膚病変をとらえることができれば診断に結びつくが,疥癬患者の臨床症状として多いのは,体幹・四肢の痒疹丘疹と搔破痕である。しかし,ここからはヒゼンダニの検出はできない。痒疹丘疹はヒゼンダニがわずかに潜って,すぐに出て行ったあとか,あるいはただ単に反応性の非特異疹と考えられている。疥癬の潜伏期は2カ月ほどと考えられていて,疥癬トンネルなどの特異的発疹が明らかになる前に診断をつけることは難しく,疑った場合にはある程度の間隔をおいて,繰り返し診察を行う必要がある。また滞在型高齢者施設や通所型ケア施設での流行情報を把握することも重要である。

    【必要な検査】

    皮膚の病変部からヒゼンダニの検出をするための方法としては,検体のKOH直接顕鏡が一般的である。疥癬トンネルや小結節を,眼科用曲剪刀などを用いてやや大きめにシェイブしそれを検体とする。成虫のほか若虫,虫卵,卵殻,糞があれば確定診断に至る。また,ダーモスコピーを用いると角層内の成虫が,茶色っぽい三角形の頭の部分を含む,径0.4mmほどの乳白色調で丸い虫体として確認できる。

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