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特集:新薬登場でどう変わる?片頭痛薬の使い分けと特徴

No.5113 (2022年04月23日発行) P.18

清水利彦 (慶應義塾大学神経内科非常勤講師)

登録日: 2022-04-22

最終更新日: 2022-04-20

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慶應義塾大学医学部卒業後,オーストラリア,フリンダース大学留学,国立病院機構東京医療センター神経内科,慶應義塾大学神経内科専任講師を経て,現在,同非常勤講師および荏原製作所産業医。

1 片頭痛とはどのような疾患か
片頭痛は,片側性,拍動性の頭痛で,随伴症状として悪心や光過敏・音過敏を伴うことが多い。わが国における片頭痛の有病率は約8.4%と報告され,女性に多い。大きくは前兆のあるものとないものとに分類される。

2 片頭痛はなぜ起こるのか
片頭痛における頭痛は,三叉神経終末から,カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide:CGRP)や神経ペプチドが放出され,血管拡張とともに三叉神経の活動性が上昇し,頭痛をきたすと考えられている。このためCGRPをターゲットとした片頭痛治療薬の開発が進められた。

3 CGRPはどのような物質で,開発された治療薬はどのような薬剤か
CGRPはカルシトニンと同一の遺伝子から生成される37個のアミノ酸より構成される神経ペプチドである。CGRPは神経伝達物質として末梢の感覚神経に存在し,片頭痛の病態には三叉神経節に局在するCGRPが重要な役割を果たしている。このCGRP受容体およびCGRPに対するモノクローナル抗体であるCGRP関連抗体薬が開発され,臨床試験では片頭痛発作予防効果を示すことが明らかにされた。わが国においても,抗CGRP受容体抗体としてエレヌマブ,抗CGRP抗体としてガルカネズマブ,フレマネズマブが使用されている。

4 CGRP関連抗体薬の投与方法は
(1)エレヌマブ(アイモビーグ
CGRP受容体に対する遺伝子組換えヒトIgG2モノクローナル抗体である。通常,成人には1回70mgを4週間に1回皮下投与する。なお,本剤の初回投与後に便秘を認める症例があるので注意する。
(2)ガルカネズマブ(エムガルティ
CGRPに結合する遺伝子組換えヒト化IgG4モノクローナル抗体である。通常,成人には初回に240mgを皮下投与し,以降は1カ月間隔で120mgを皮下投与する。
(3)フレマネズマブ(アジョビ
CGRPに結合するマウス前駆体由来のヒト化免疫グロブリンG(IgG)2Δa/kappaモノクローナル抗体である。通常,成人には4週間に1回225mgを皮下投与,または12週間に1回675mgを皮下投与する。

5 CGRP関連抗体薬はどのような患者に投与するか
投与対象は,国際頭痛分類第3版に基づき,前兆のある片頭痛,前兆のない片頭痛または慢性片頭痛と診断され,片頭痛日数が直近3カ月間で平均月4日以上で,片頭痛発作の急性期治療や生活指導を行っても日常生活に支障をきたし,従来の発作予防薬の使用や継続ができない患者とされる。
継続の有無については,投与開始後3カ月(3回投与後)を目安とし,3回投与により症状の改善が認められない場合は,投与中止を考える。
片頭痛発作予防薬であるため,急性期治療薬や制吐薬の処方は継続する。ただし,経過観察をしながら急性期治療薬および予防薬の処方量を調節する。

伝えたいこと:片頭痛患者の生活支障度は著しく高い
これまでトリプタンや多くの予防薬があるにもかかわらず,世界の疾病負担研究において,片頭痛は疾病負担が最も大きい神経疾患であることが示されている。さらに片頭痛による経済的損失額も算出され,個人の生活のみならず社会にも大きな影響を与えていることが示されている。また,現状の治療薬では解決できないunmet medical needsが明らかにされている。このような片頭痛患者の社会生活を改善させるために新しい片頭痛発作予防薬が期待されている。

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