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新型コロナ“第6波”で休業が急増─医療団体による医師向け支援制度【まとめてみました】

No.5114 (2022年04月30日発行) P.14

登録日: 2022-04-27

最終更新日: 2022-04-27

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感染力の強い新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の“第6波”による影響で、診療を休む医師が増加している。現在はやや落ち着いているものの地域のクリニックは1人医師体制が多く、今後の感染状況によっては通常医療への影響が懸念される。一方、わが国では医師の高齢化が加速する。医師は勤務医であっても個人事業主の性格が強く、医師だからこそ病気やケガのリスクへの備えが重要になる。

医師・歯科医師を合わせ10万人以上が加入する全国保険医団体連合会の会員向けに「保険医休業保障共済制度」を運営する全国保険医休業保障共済会が、COVID-19に感染または感染疑いにより休業した会員に、同制度の給付金を支給した件数をまとめたのが図1。2022年1月は9件、2月は16件だったが、3月には71件と急増した。COVID-19の感染拡大が始まった2020年1月以降で最も給付件数の多かった2021年6月と7月の29件を大きく上回る。このデータでは症状の軽重まで把握することはできないが、COVID-19が感染症法上の2類相当という現状では、感染者・濃厚接触者ともに一定期間の休業を余儀なくされるため、特に開業医にとっては収入減に直結する。厚労省はオミクロン株の感染力の強さを受け、医療提供体制を確保するために「自宅・宿泊施設で療養・待機する医師」がオンライン診療を実施することを容認する事務連絡を1月に出したが、実際に運用されているケースは少ない。

激務な医師だから休業への備えが重要

医師の働き方を巡っては、長時間労働が常態化しており、休日の確保が難しく、1週間の労働時間が60時間を超える医師が41.8%というデータがある。2020年以降は、COVID-19の感染拡大で多くの医師を取り巻く労働環境が厳しさを増している。2024年4月から開始予定の「医師の働き方改革」では、「勤務医の時間外労働の年間上限は原則960時間とする」「連続勤務時間制限、長時間勤務医師の面接指導などで、勤務医の健康確保を目指す」など長時間労働是正に向けた取り組みが実行される予定だが、コロナ禍で本人が望まなくても“医師の不養生”を余儀なくされている状況だ。

医師の健康リスクには高齢化も挙げられる。1970年代に医学部32校が新設された影響で、70年代前半まで毎年約3000人だった医師国家試験の合格者が80年以降は毎年約8000人に増加。年代別の医師数は30代、40代、50代がいずれも約8万人、60代が約4万8000人、70代が約3万3000人。日医総研が1996~2016年の医師数の傾向を基に、2036年までの医師数を将来推計したレポートによると、24歳~34歳の医師数は2016年時点の6万518人から6万5676人と5000人程度の増加、35歳〜49歳の医師数も8464人と8%程度の増加にとどまる一方、65歳以上は4万4898人と大幅増で、約2倍の93%増となることが予想されている。

高齢化に伴い、多くの医師に想定していないタイミングで休業のリスクが増加する。こうしたリスクへの備えとして、医療団体は医療施設や医師を対象とする休業支援制度を拡充している。

新型コロナ対象の日医休業補償制度

日本医師会は2020年11月より会員向けに「日本医師会休業補償制度」を創設。医療機関の医師や職員等がCOVID-19に感染または濃厚接触者となり、医療機関が休業を余儀なくされた場合の逸失利益や家賃などの継続費用を補償する休業補償制度だ。診療所や病院、医師会立検診・検査センターに加え、2022年1月より医療機関に併設する介護サービス事業所も対象となった。休診日を含む連続3日以上の閉院が確認できた時点で請求が可能。医療機関1施設当たり最大200万円(介護サービス事業所は50万円)が補償される。

全保険医療機関等を対象としているのが、日本医療機能評価機構が運用する「新型コロナウイルス感染症対応医療従事者支援制度」。国からの補助金や日本医師会や日本看護協会など医療団体からの寄付金を活用することで創設された。医療従事者がCOVID-19に感染して4日以上休業し、療養給付または休業補償給付が決定された場合に30万円、死亡した場合500万円が給付される。同機構によると、2021年度(募集期間:2021年10月15日〜22年2月14日)の加入は1万6633施設、115万5851人となっており、前年比6308人増となっている。

保団連の休業保障は入院初日から給付可能

保団連や保険医会・保険医協会の会員であれば、COVID-19に限らず休業した場合に保障を受けられるのが前述の「保険医休業保障共済制度」。同制度は掛金が加入時から満期(75歳)まで上がらず一定で、加入しやすく、所得補償保険など他の制度の加入状況に関係なく給付される点に特徴がある。

同制度の給付理由の内訳(図2)を見ると、「悪性新生物」が24%と最も多く、「循環器系・血液疾患、免疫障害」17%、「消化器疾患」11%と続く。給付は休業日数に応じた定額で、自宅療養で30日間の給付を受けると144万円(8口加入の場合)となる。

1人当たり平均給付日数(表2)は、悪性新生物が98日、最も長い精神・神経系の疾患が178日となっており、長期の療養をカバーするため、給付限度は傷病休業給付金500日、長期療養給付金230日に設定されている。2022年度からは入院初日から給付が可能となる改正が行われた。

医療団体の休業支援は民間の保険に比べ比較的少ない負担で補償や保障が受けられる。いざという時の備えとして検討してみてはいかがだろうか。

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