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ANCA関連血管炎性中耳炎(OMAAV)[私の治療]

No.5118 (2022年05月28日発行) P.48

吉田尚弘 (自治医科大学附属さいたま医療センター耳鼻咽喉・頭頸部外科教授)

登録日: 2022-05-26

最終更新日: 2022-05-24

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  • 抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)関連血管炎に伴う中耳炎(otitis media with ANCA-associated vasculitis:OMAAV)である。鼻,肺,腎などの全身症状を呈する前に中耳炎を生じ,ANCA抗体価の測定や臨床症状の類似性から,ANCA関連血管炎による中耳炎と診断される症例が近年多く報告されている。日本では地域差はあるがMPO-ANCA陽性の中耳貯留液を伴う中耳炎が多い。

    ▶診断のポイント

    日本耳科学会「ANCA関連血管炎性中耳炎診断基準2015」では,A)臨床経過:1. 抗菌薬または鼓膜換気チューブが奏効しない中耳炎, 2.進行する骨導閾値の上昇,B)所見:1. ANCA関連血管炎と既に診断,2. ANCA抗体価陽性,3. 病理組織診断,4. 参考となる所見,C)鑑別疾患の否定,の大きく3つの項目がある。A)B)C)の3項目すべてが該当する場合にANCA関連血管炎性中耳炎と診断される。

    所見では,PR3-ANCA,MPO-ANCA抗体価の上昇がみられることが多いが,陰性のこともある。グルココルチコイドの奏効性,早期減量による再燃や経過中に顔面神経麻痺,肥厚性硬膜炎などの合併から診断に至ることもある。鼓膜の血管怒張,外耳道の発赤は本疾患を疑う所見のひとつである1)

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    臨床症状から本疾患を疑い,早期に診断し,治療を開始することが大切である。聾に至った症例ではほぼ聴力は回復しない。基礎疾患,肺,腎病変合併の有無について血液/尿生化学検査,画像診断で確認する。頭痛がある場合には,造影MRIにて肥厚性硬膜炎合併の有無を確認する。

    基礎疾患のない患者では,グルココルチコイド〔プレドニン(プレドニゾロン)〕と免疫抑制薬(シクロホスファミド,メトトレキサートなど)を併用した免疫抑制療法により寛解導入を行う2)。近年は,免疫抑制薬に代わりリツキシマブを用いた治療も報告されている3)4)。免疫抑制薬無効/併用困難例,再燃の治療として使用されることが多い。

    高齢者,基礎疾患があり免疫抑制薬による副反応の発生が強く懸念される症例では,グルココルチコイド単独の治療となる。グルココルチコイドと免疫抑制薬併用群は,グルココルチコイド単独使用群よりも聴力予後がよいため,全身状態にもよるが,両薬剤の併用が推奨される。

    長期的な免疫抑制療法が必要である。グルココルチコイドの副反応による糖尿病,易感染性,真菌感染,骨粗鬆症,胃潰瘍などに注意する。

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