Q熱は「query fever=不明熱」に由来しており,1935年にオーストラリアで流行した原因不明の熱性疾患として初めて報告された。のちにリケッチアの一種コクシエラ菌(Coxiella burnetii)による感染症であることが明らかとなった。ウシ,ヒツジ,ヤギなどの反芻動物の尿,糞,乳汁などから菌が排泄され,この菌に汚染された空気中の粉塵などを吸うことでヒトに感染するが,ヒト-ヒト感染は稀である。発熱や全身倦怠感を主とした急性疾患である一方,初感染では60%が無症候性感染となる。急性型の1~2%は心内膜炎などを呈して慢性型に移行する。慢性疲労症候群の原因となりうることが知られている1)。
急性型では発熱,頭痛,筋肉痛,全身倦怠感,呼吸器症状などインフルエンザ様症状を呈し,時に肺炎や肝炎,稀に皮疹がみられる。Q熱には特異的な症状や所見がないため,他の疾患との鑑別は困難であるが,潜伏期が2~4週間であり,上記のような家畜との接触歴など問診から診断につなげていくことが肝要である。
治療には,早期に本症を疑い,適切な抗菌薬を投与することがきわめて重要である。細胞内寄生菌であるためβラクタム系薬は無効である。第一選択薬はテトラサイクリン系薬である。ニューキノロン系薬やマクロライド系薬も有効である。8歳以下の軽症例,妊婦ではスルファメトキサゾール・トリメトプリムでの治療が可能である。比較的長期間の抗菌薬投与が必要とされ,急性型で2~3週間,慢性型に移行した場合は18~36カ月,もしくは生涯の投与が必要とされる。
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