下咽頭粘膜に発生する悪性腫瘍で,組織学的にはほとんどが扁平上皮癌である。飲酒や喫煙が危険因子である。受診時に既にリンパ節転移や遠隔転移を生じていることが多い。近年になり上部消化管内視鏡の画質向上に伴い,早期癌の発見が増えてきている。
嚥下時違和感,嚥下時痛,咽頭痛など非特異的な症状が多い。進行例では食事の通過障害,気道狭窄による呼吸困難,吐血などが生じうる。
内視鏡検査で下咽頭領域を観察すると,初期病変は食道癌同様に血管不整病変として観察できる。内視鏡経由で腫瘍の生検を行い,組織診断を確定する。転移例や重複癌を有する症例が多いため,頸胸部のCTや上部消化管内視鏡による多重癌の検索を行う。遠隔転移を評価する際にはPET-CTも有用である。
下咽頭癌の治療の際には,近接している喉頭の機能について常に配慮する必要がある。
解剖学的に下咽頭は梨状陥凹,後壁,輪状後部,食道入口部にわけられる。腫瘍の解剖学的部位と腫瘍の広がり(ステージ分類)に合わせて治療を計画する。
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