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特集:認知症×便秘

No.5124 (2022年07月09日発行) P.18

榊原隆次 (東邦大学医療センター佐倉病院内科学脳神経内科教授)

登録日: 2022-07-08

最終更新日: 2022-07-06

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1984年旭川医科大学卒業。千葉大学医学部神経内科,ロンドン大学神経研究所などを経て,2016年より現職。難病患者の消化管を含めた自律神経障害の治療とケアに取り組む。著書に『認知症の排泄ケア ベッドサイドマニュアル』(共編著)など。

1 認知症の便秘は「高齢者の便秘」ととらえる
80歳代高齢者では,白質型多発性脳梗塞(WMD),アルツハイマー病(AD),レビー小体型認知症(DLB)〔パーキンソン病(PD)の類縁疾患で,末梢自律神経線維にも病変がみられる〕が多くみられ,それぞれ80%:33%:7~8%とも言われる(重複を含む)。なお,特にAD+WMDの組み合わせが多い。
さらに,高齢者では,末梢神経障害をきたす糖尿病が10~20%にみられる。自律神経障害の中の消化管運動障害(便秘,イレウス)は,加齢とともに増加する。便秘には腸管壁内神経叢などの末梢神経病変が主に関与しており,高齢者ではDLBと糖尿病の関与が推定されている。

2 高齢者の便秘・イレウスの機序
排便機能は,①大腸内容物の輸送,②直腸・肛門での一時的蓄便,③直腸・肛門からの排便,に大きくわけられ,検査として,①に対して大腸通過時間(CTT),②③に対して直腸肛門ビデオマノメトリーなどがある。
DLB/PD・糖尿病では,CTT延長,直腸固有収縮低下,腹圧低下,排便時の奇異性括約筋収縮(PSD,アニスムスとも言う)が高頻度にみられる。そのため,DLB・糖尿病では,通過遅延型便秘と直腸肛門型便秘の両者が,同時にみられることが多い。

3 高齢者の便秘の治療~生活指導と,服用中の薬剤の調節
まず,運動・食物繊維の摂取を勧める。抗コリン薬(向精神薬クロルプロマジン塩酸塩,PD治療薬トリヘキシフェニジル塩酸塩,腹痛治療薬ブチルスコポラミン臭化物など),抗セロトニン薬(抗うつ薬イミプラミン塩酸塩など)は消化管運動を抑えることから,他薬剤に変更する。
認知症治療薬である中枢性コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル塩酸塩など)の消化管に対する影響として,嘔気・食思低下があるため,ドンペリドンなどの嘔気改善薬を適時追加する。PD治療薬であるレボドパの消化管に対する影響としては,消化管運動は不変から軽度改善することが多い。

4 高齢者の便秘の治療~便軟化膨張薬
便膨化薬(ポリカルボフィルカルシウム,マクロゴール4000),または便軟化膨張薬(water giver)として浸透圧性下剤(マグネシウム製剤,ラクツロース),上皮機能変容薬(ルビプロストン,リナクロチド,エロビキシバット)などを開始する。

5 高齢者の便秘の治療~胃腸運動促進薬など
上記薬剤で効果が十分でないとき,胃腸運動促進薬として,末梢性コリン作動作用のあるニザチジン,選択的セロトニン5-HT4受容体刺激薬のモサプリドクエン酸塩,漢方薬の大建中湯(5-HT3受容体刺激作用)などを追加する。
直腸肛門型便秘の治療として,排便反射を促す目的でレシチン/炭酸水素ナトリウム坐薬などを使用する。モサプリドクエン酸塩,大建中湯でも排便時の直腸収縮の増強がみられる。

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