成長期の投球障害として最も頻発するリトルリーグ肘で,上腕骨内側上顆に裂離骨折を認める場合,その治療についてはいまだ議論の多いところです。すなわち,投球を禁止し骨癒合を待つとする考え方と,運動痛が消失し可動性が正常化すれば,骨癒合が得られていなくても投球フォームを矯正しながら投球を始めてもよい,とする考え方とが相対して存在します。肘関節学の権威で,肘スポーツ医学の専門医である慶友整形外科病院・伊藤恵康先生にご教示頂ければ幸いです。
【質問者】
麻生邦一 麻生整形外科クリニック院長
内側上顆の裂離骨折の治療は,これまで目先の早期復帰のみをめざして治療あるいは指導が行われてきました。急性発症したこの部の裂離骨折は「骨折」であり,さらに,馬見塚尚孝先生の高分解能MRIを用いた研究により,ほとんどの例が軟骨膜の変位・断裂と尺側側副靱帯の形態異常・信号変化を伴っていたことが明らかになっています。
X線像で陳旧性にみえる症例を診ると,裂離部の圧痛と徒手外反ストレスで疼痛が増加し,肘内側の安定性が低下しています。しかし,受傷時の疼痛は軽微なので受傷時の記憶がまったくない患者も少なくありません。また,「野球肘の癌」とも呼ばれる上腕骨小頭の離断性骨軟骨炎例のX線像では,ほとんどの例にリトルリーグ肘の所見がみられ,肘内側の不安定性を伴っています。
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