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唾石症[私の治療]

No.5127 (2022年07月30日発行) P.50

高原 幹 (旭川医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座講師)

登録日: 2022-07-27

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  • 唾石症は唾液腺,唾液腺管内に脱落上皮,迷入異物,細菌,カルシウムなどで構成された結石を生じる疾患と考えられる。大唾液腺,特に顎下腺に好発するが,その理由として,顎下腺唾液内に結石の組成となるカルシウム・リン酸塩が高濃度に存在することに加え,唾液が粘稠であり,ワルトン管が長く腺体から頭側方向に走行するため,唾液の停滞が起こりやすいことが挙げられる。
    多くは摂食時の唾液腺腫脹を呈し,感染を併発すると痛みを生じる。さらに進行すれば,腺内の膿瘍形成や唾液腺管開口部や皮膚からの排膿を生じる場合もある。自然排石による自然治癒もありうるが,炎症を繰り返す場合は摘出術の適応となる。摘出方法は皮膚切開によるものと口腔底粘膜切開によるものがあり,唾石の大きさ,性状,位置,患者の希望などにより選択される。

    ▶診断のポイント

    唾石が腺内あるいは唾液腺管内に嵌頓することにより,摂食時の有痛性唾液腺腫脹を生じる。特徴的な症状と口腔底と頸部の双手診における唾石の触知にて本疾患を疑い,エコーやCTなどの画像診断にて確定する。顎下腺唾石の場合,唾石は顎下腺管内か顎下腺との移行部に存在する場合が多い。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    唾石腺炎を起こしている場合は抗菌薬の投与を行う。また,内視鏡での手術を予定している場合,唾液腺炎は内視鏡手術の禁忌となるため,予防的に手術1週前から抗菌薬を内服するように指導する。

    唾石による唾液腺炎を繰り返す場合は手術適応となる。手術療法としては,顎下腺唾石であれば口腔底切開による口内法での唾石摘出と頸部切開による顎下腺摘出が挙げられる。口内法は開口部付近の唾石に適応となるが,唾液腺内視鏡を利用すれば移行部の唾石へもアプローチ可能となる。顎下腺摘出は移行部から腺内の唾石に適応となる。

    耳下腺唾石の場合は,咬筋前方までの唾石では内視鏡(補助)下口内法による摘出で,それ以外は皮膚切開によるアプローチを考える。ただし,皮膚切開は顔面神経麻痺の合併が懸念されるため,患者との相談の上,経過観察となる場合も多い。

    手術を希望しない,あるいは全身状態等で手術が難しい場合は保存的治療を選択する。唾液腺マッサージや酸味のある食事の摂取を心がけ,唾液分泌を促進させ,自然排石を促す。

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