黄色ブドウ球菌は様々な感染症を引き起こす病原体であるが,様々な耐性機構を持つことも知られている。特に,βラクタム系抗菌薬に耐性を示すメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)は,臨床現場で最も遭遇する機会の多い多剤耐性菌である。MRSA感染症の治療としてはバンコマイシンが最もエビデンスがあり,使用される頻度も高いが,バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(vancomycin-resistant Staphylococcus aureus:VRSA)およびバンコマイシン中等度耐性黄色ブドウ球菌(vancomycin intermediate-resistant Staphylococcus aureus:VISA)が報告されている。
VRSAは米国をはじめ様々な国で検出されており,特にアフリカでは検出頻度が高い。わが国ではVRSAは過去に1例しか報告されていないが,VISAは検出されることがあるため,注意が必要である1)。VRSA/VISAによる感染症を疑った場合,ともにバンコマイシンの効果が期待できないため,治療に際してはバンコマイシン以外の薬剤を検討する。
確定診断は,感染巣から採取された検体の培養検査においてVRSA/VISAを検出することである。米国CLSI(Clinical and Laboratory Standards Institute)では,同定検査において黄色ブドウ球菌と判定され,薬剤感受性検査(微量液体稀釈法)でバンコマイシンの最小発育阻止濃度(minimum inhibitory concentration:MIC)が≦2μg/mLの場合は感性であるが,4~8μg/mLの場合をVISA,≧16μg/mLの場合をVRSAと定義している。
VRSAはvanA,vanB,vanC遺伝子のいずれかを保持することでバンコマイシン耐性を獲得するが,VISAは細胞壁の合成に関わる因子の遺伝子変異によって中等度耐性をきたす。また,MIC=2μg/mLの株は定義上感性であるが,値としては高めであり,hetero-VISAと呼ばれる潜在的な耐性機序によりバンコマイシン治療抵抗性を示す場合がある。
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