1 好酸球性副鼻腔炎とは何か?
①内視鏡下鼻副鼻腔手術を行ってもすぐに鼻茸が再発する,治療に難渋する難治性慢性副鼻腔炎。
②鼻茸への好酸球浸潤が著しい。
③1995年頃から出現し,増加傾向。患者数2万~5万人。
④気管支喘息,非ステロイド性抗炎症薬不耐症(N-ERD)の併存が多い。
⑤欧米でいうchronic rhinosinusitis with nasal polyp(CRSwNP)がおおむね該当し,そのうちの治療抵抗性の疾患が該当する。
⑥末梢血好酸球も増加していることが多い。
2 好酸球性副鼻腔炎の診断と重症度分類
①JESRECスコアを用いる。
②CT所見,末梢血好酸球率,併存症により重症度分類を行う。
③嗅覚障害を伴う副鼻腔炎が好酸球性副鼻腔炎である可能性が高い。
④両側の鼻閉が存在する。
⑤内視鏡検査で鼻腔に鼻茸を認めることが大切。
3 好酸球性副鼻腔炎の病態は?
①2型炎症反応が中心で,IL-4,IL-5,IL-13が関与している。
②ポリクローナルIgEが関与している。
③鼻茸の成分にはフィブリンが含まれている。
④上皮系サイトカインの関与も大きい。
⑤Th2細胞とILC-2細胞ともに2型サイトカインを産生している。
⑥凝固系が亢進し線溶系が抑制された状態である。
⑦本疾患は全身的疾患であり,副鼻腔での表現系という考え方が出てきている。
4 好酸球性副鼻腔炎の治療
①感染の制御。
②確実に鼻茸を摘出し,単洞化する,内視鏡下鼻副鼻腔手術が第一選択。
③経口ステロイドは有効だが,長期間の使用は避けたほうがよい。
④個人差はあるが,経鼻呼出法による吸入ステロイドの使用と辛夷清肺湯が有効なことがある。
⑤どうしようもないときには,鼻洗浄を勧める。
⑥生物学的製剤のデュピルマブに保険適用があるが,適正使用ガイドラインに則って使用しなければならない。
読者に伝えたいこと…
気管支喘息を治療されている内科医・総合診療医の先生においては,「この気管支喘息はなかなか軽快しない。きっと鼻が悪いんだ」と思われることが多いかと思います。
これまでは,治療抵抗性気管支喘息において副鼻腔気管支症候群のような膿性の後鼻漏が悪さをしていたり,アレルギー性鼻炎を合併しているので鼻閉があり口呼吸をしていたりして,気管支喘息が軽快せず,耳鼻咽喉科に紹介したり,ご自身でマクロライドや抗ヒスタミン薬を処方したりすることが多かったと思います。確かにそのような患者さんはいますが,現在では「においがわからない」と訴える気管支喘息の患者さんを診たら好酸球性副鼻腔炎を疑い,すぐに耳鼻咽喉科に紹介して頂きたいと思います。
また耳鼻咽喉科の先生は,そのような患者さんには内視鏡検査を行って鼻茸の有無を確認後,採血,CTを撮影し,JESRECスコアをつけて頂きたいと思います。JESRECスコアが11点以上あった場合,経口ステロイドを処方し,鼻茸が縮小し鼻閉が軽快すれば好酸球性副鼻腔炎であると確信できます。