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好酸球性副鼻腔炎[私の治療]

No.5136 (2022年10月01日発行) P.46

櫻井大樹 (山梨大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座教授)

登録日: 2022-10-04

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  • 好酸球性副鼻腔炎は,好酸球浸潤の著しい鼻茸と副鼻腔粘膜の肥厚を伴い,易再発性で難治性の疾患である。成人発症でアスピリン喘息を含む気管支喘息の合併が多い。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    鼻腔内の中鼻道や嗅裂に浮腫状鼻茸が多発し,ニカワ状の粘稠な鼻漏を認め,嗅覚障害や鼻閉を呈することが多い。

    【検査所見】

    JESRECスコアによって診断する。①病変が両側性(3点),②鼻茸の存在(2点),③CT画像で篩骨洞優位の陰影(2点),④末梢血中好酸球(2%< ≦5%:4点,5%< ≦10%:8点,10%<:10点),から11点以上であると臨床的に診断ができる。さらに,400倍視野で鼻茸の生検組織もしくは手術標本の顕微鏡検査を行い,3視野平均で70個以上の好酸球が存在すれば確定診断となる。

    重症度は,A項目(末梢血好酸球が5%以上かつ篩骨洞優位なCT陰影の存在)とB項目(気管支喘息,アスピリン不耐症,NSAIDsアレルギーのどれか1つ以上の合併)を両方満たせば重症,どちらか1つで中等症,どちらもない場合は軽症と分類される。重症度が高いほど再発率が高く難治性である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    好酸球性副鼻腔炎に対する治療として,手術治療,薬物治療がある。軽症例や手術を希望しない症例,手術不適応の症例には保存的治療を行う。鼻内ポリープが多発し鼻閉や嗅覚障害を強く訴える症例には,手術治療が基本となる。一方,術後の再発例や手術不適応のコントロール不良症例には抗体療法〔デュピクセント®(デュピルマブ)〕を行うことができる。

    まず,好酸球性副鼻腔炎の疑い症例では,慢性副鼻腔炎の治療に準じ,鼻内の局所清浄処置とともに,マクロライド療法〔クラリス®(クラリスロマイシン)〕として常用量の半量を継続処方する。同時に気道粘液調整・粘膜正常化薬〔ムコダイン®(L-カルボシステイン)〕を併用する。効果判定は3カ月を目安とし,治療無効な症例は,JESRECスコアにより臨床診断を行い,手術治療または保存的治療を検討する。

    保存的な治療として,鼻噴霧用ステロイド〔アラミスト®(フルチカゾンフランカルボン酸エステル),モメタゾン(モメタゾンフランカルボン酸エステル水和物),エリザス®(デキサメタゾンシペシル酸エステル)〕,ロイコトリエン受容体拮抗薬〔シングレア®(モンテルカストナトリウム)〕, 気道粘液調整・粘膜正常化薬(ムコダイン®)を併用する。効果不十分な場合には局所ステロイド点鼻薬〔リンデロン®点眼・点耳・点鼻液(ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム)〕の投与を行う。手術治療として,鼻内ポリープおよび鼻副鼻腔の肥厚した病的粘膜を除去し,閉塞した副鼻腔を開放する。術後は,鼻噴霧用ステロイドと鼻洗浄による局所治療を行い,再燃を抑制する。再発時は経口ステロイド〔プレドニン®(プレドニゾロン)〕を追加する。これらの治療を行ってもコントロールが不良な症例には,ヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体(デュピクセント®)を用いる。

    好酸球性副鼻腔炎は指定難病に認定されており,確定診断と喘息等の合併により医療費助成制度の対象となる。

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