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百日咳[私の治療]

No.5139 (2022年10月22日発行) P.46

木戸口千晶 (国立成育医療研究センター感染症科)

登録日: 2022-10-25

最終更新日: 2022-10-19

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  • 百日咳は百日咳菌(Bordetella pertussis)による呼吸器感染症で,飛沫感染で伝播し,潜伏期間は5~21日間だがその多くは7~10日間である。軽度の上気道症状(カタル期)から激しい発作性の咳(痙咳期)へと進行し,症状は数週~数カ月の経過で徐々に軽快(回復期)する。痙咳期には,レプリーゼと呼ばれる連続性の咳嗽発作(staccato)と吸気性の笛声(whoop)を繰り返し,それに続く嘔吐,という特徴的な症状を呈する。合併症としては肺炎,肺高血圧,脳症などがあり,致命的となることもある。生後6カ月未満児,特に早産児が罹患した場合は,症状が非典型的かつ無呼吸や徐脈を伴うことがあり,合併症も多く重症となりうることが知られている。

    現在,わが国では百日咳・ジフテリア・破傷風・ポリオの4種混合ワクチン(DPT-IPV)が定期接種となっているが,重症化しうる乳児への百日咳の感染源のうち,年長児の割合増加が問題となっている。原因として,予防接種完了後の年長児における百日咳抗体価の減衰が挙げられている。これを受け日本小児科学会は,就学前児への3種混合ワクチン(DPT)と不活化ポリオワクチン(IPV)の任意追加接種や,11歳以上13歳未満児への定期2種混合ワクチンに替わるDPTの任意接種を推奨している。

    ▶診断のポイント

    曝露歴と前述した痙咳期の特徴的な症状による臨床診断に加え,血液検査でリンパ球優位の白血球数増多や,心臓超音波検査では肺高血圧症を認めることがある。確定診断のためには血清学的検査や培養検査,遺伝子検査を考慮する。血清学的検査は,ワクチン接種後では急性感染と区別ができずペア血清が必要となるため,迅速性には劣る。培養検査は特異度が高いが,百日咳菌は栄養要求性が高く,特殊培地を要するため感度が低いことが問題である。遺伝子検査にはLAMP法,PCR法などが含まれ,感度,特異度,迅速性に優れている。

    感染症法で,百日咳は5類感染症の全数把握疾患に定められており,診断した医師は診断後7日以内の保健所への届出が義務づけられている。また,学校保健安全法により,罹患児は百日咳特有の咳が消失するまで,または5日間の適正な抗菌薬による治療が終了するまで,出席を停止しなければならない。

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