厚生労働省の「医療法人の経営情報のデータベースの在り方に関する検討会」は11月8日、報告書をまとめた。医療法人に収益・費用などの経営情報の提出や、給与に関する情報の任意提出を求める制度を創設し、医療法人の経営情報データベース(DB)を構築する。今後、社会保障審議会医療部会の承認を経て、医療法改正の準備に入る。23年度早期の施行を目指す。
新制度は、法人税制度で社会保険診療報酬の所得計算の特例(いわゆる四段階税制)が適用されている小規模法人を除く、すべての医療法人が対象。対象法人には、病院会計準則に基づく損益計算書(収益・費用)の情報の提出義務が課される。法人の中には経営の多角化を進めている場合もあるが、新制度の対象事業は病院と診療所に限定し、医療機関ごとの経営情報の提出を求めることとする。
これに対して資産、負債、純資産の情報は提出を求めず、既存の事業報告書等の法人単位の貸借対照表を活用する。施設単位の貸借対照表を作成していない法人が一定数あることに配慮した。
給与費に関する情報も集める。「職種ごとの給与の合計額」(直近1月1日〜12月31日)と「職種ごとの延べ人数」を把握して、「職種ごとの年間1人当たり給与額」を算出し、医療従事者の処遇改善を論じる際の基礎データとして活用する。このうち後者は、「病床機能報告」の毎年7月1日時点の「職種別の人数」の転用を基本とし、同報告の対象外である無床診療所などの場合のみ、同じ7月1日時点の人数の報告を求める。ただし、法人の事務負担軽減の観点から、これら給与関連情報は任意提出項目に位置づける。
医療がおかれている状況に対する国民の理解が促進されるよう、法人の経営情報を公表する取り組みも推進。その際、公表内容は属性等に応じてグルーピングした分析結果のみとし、個別の医療機関を特定できないように工夫する。
学術研究などに利用目的を限定した「第三者提供制度(仮称)」も創設する。DBのデータが充実するのに必要な期間を見込んだ施行日を別に設定し、それまでの間を具体策の検討に充てる。なおDBの構築・運用と経営情報の分析は、国と独立行政法人福祉医療機構が連携して行うことになる見通しだ。