政府は10日、「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の改正案」を閣議決定し、国会に提出した。かかりつけ医機能報告制度や医療法人の経営情報報告制度のほか、出産育児一時金の見直しなどが盛り込まれており、改正する法律は医療法、健保法、介護保険法、高齢者医療確保法など広範にわたっている。
この法案は内閣府の全世代型社会保障構築会議(座長=清家篤日本赤十字社社長)が昨年12月にまとめた報告書を受けたもの。改正の内容は、(1)こども・子育て支援の拡充、(2)高齢者医療を全世代で公平に支え合うための見直し、(3)医療保険制度の基盤強化、(4)医療・介護の連携機能および提供体制等の基盤強化―の4つの領域に及んでいる。
このうち、(1)では出産育児一時金の支給額を引き上げる(現行42万円を2023年5月から50万円に引き上げ=政令事項)とともに、その費用の一部を後期高齢者医療制度から支援する仕組みを導入する。(2)では後期高齢者負担率の設定について、「後期高齢者1人当たり保険料」と「現役世代1人当たり後期高齢者支援金」の伸び率が同じとなるように見直す。(3)では都道府県医療費適正化計画に記載すべき事項を充実させるとともに、保険者協議会を必置とするとしている。
(4)では、かかりつけ医機能を持つ医療機関に、その内容を都道府県に報告することを義務化。患者や家族の求めに応じて、電磁的な方法で治療計画などを説明することも規定した。都道府県は報告を受けた内容を病院等に確認するとともに、その結果を医療計画などに反映させる。また、医療法人や介護サービス事業者に対し、その収益や費用などの経営情報を都道府県に報告することを義務化する。
改正案の施行期日は24年4月1日。ただし医療法人の報告制度は23年8月1日、かかりつけ医機能報告制度は25年4月1日などとなっている。
10日の閣議後会見で法案の閣議決定について報告した加藤勝信厚生労働相は、「法案の中身に関わるが、一つはかかりつけ医機能をしっかり発揮していく形で医療提供体制を構築していく」と述べ、かかりつけ医機能の重要性を強調した。