筆者が2018年より開始した産婦人科領域における遠隔健康医療相談サービス1)から、活用事例シリーズの第2回目として、今回は「過去の受診によるトラウマ」について紹介したいと思います。
診療科にかかわらず、何か困りごとや不安を抱えて受診した際に、医師や医療スタッフから心ない言葉を投げかけられたり、診察の中で非常に嫌な経験をされた患者さんは決して少なくありません。ただ、こうした患者さんの多くはもうその医師や医療機関には訪れないため、医師や医療機関は「そのこと自体に気づかない」傾向にあると感じています。特に産婦人科では、内診というとてもセンシティブな診察が行われ、医師にさえも相談しにくい悩みを抱えていることが多く、こうした「過去の受診によるトラウマ」によって継続受診や定期検診の道が閉ざされてしまっていることはご本人の健康にとって大きな不利益となります。
オンライン相談では、まず話を聞くだけですし、対面せずとも会話ができるため、「過去の受診によるトラウマ」を抱えていて受診できない状況にある女性からの相談もしばしば寄せられます。内診時に声かけもなくとても嫌な思いをした、子宮頸がん検診時に痛みへの配慮を全くされなかった、月経痛で受診した際に「このくらいなら我慢しなさい」「ピルなんて飲むもんじゃない」と言われた、などの声を聞くたびに、産婦人科医としてのあるべき姿勢を考えさせられます。また、年代や地域による差もあるように感じています。
こうしたトラウマを抱える女性に適切な情報やアドバイスを提供し、信頼関係を構築し、適切な受診に繋げていくことは遠隔健康医療相談の大事な役目だと考えています。そして、医学知識だけでなく、今の時代に必要な姿勢や配慮というものをアップデートし続けることが大切でしょう。
【文献】
1)株式会社Kids Public:産婦人科オンライン.
https://obstetrics.jp/
重見大介(株式会社Kids Public、産婦人科オンライン代表)[心ない言葉][信頼関係構築]