来年は診療報酬改定の年である。今や患者は高齢化し、入院患者ももうすぐ80%が高齢者となる。医療だけでなく介護保険も同時に利用している人もどんどん増えている。
残念なことに高齢者は病気になってもなかなか治らないし、その上、急性期病院での介護やリハビリテーション提供不足により、すぐに寝たきり状態になって退院させられてしまう。まずはこの問題に注力して急性期病院に「基準介護」「基準リハビリテーション」を適用すれば、要介護者を少なくできるはずなので、厳しい時代の始まりの年に大胆な改定を期待したい。
さらに注力してもらいたいのがリハビリテーションである。要介護状態にならないように「予防リハビリテーション」を導入すべきである。リハビリテーションは、一度何らかの障害を受けた人に実施することになっているが、高齢者への「予防リハビリテーション」は、確実に要介護者を減らすだろう。回復期リハビリテーション病棟での入院も最大6カ月間は長すぎる。もっと短期間に集中的にリハビリテーションを行うべきだ。短期間の集中リハビリテーションでアウトカム評価により確実に改善した症例にはインセンティブを付与すべきだろう。
そして最大の注目ポイントは地域包括ケア病棟である。厚生労働省は急性期充実体制加算と総合入院加算算定病院と大学病院を含め、約30万床を本物の急性期病院として認め、それ以外は地域の急性期を担う地域多機能病院として、1つの医療圏の中で高齢者の多様な病変を総合的に治療させようとしている。急性期病院に手術件数などの実績を入れたことにより、「なんちゃって急性期」をふるい落としている。
地域包括ケア病棟は確実に地域の高齢者の急性期から回復期をカバーしなければならない。急性期病院の7対1病棟の受け皿的機能の病棟にしてはならない。
しかし療養病床から地域包括ケア病棟を担っている病棟は、全体のわずか13%しかいない。もはや日本には寝たきり患者収容所的な病院は必要ないのである。介護施設は有り余るほどできている。地域の意欲的な多機能病院が、地域包括ケア病棟と回復期リハビリテーション病棟を取り、更に慢性期重症治療病棟を持っていれば、地域の高齢患者の入院受け入れ対応は完璧である。
日本の超高齢化は予想外に早い。来年の同時改定では大胆な改定をしなければ、大変なことになるだろう。
武久洋三(医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)[急性期病院][リハビリテーション][地域包括ケア病棟]