株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

化膿性関節炎[私の治療]

No.5159 (2023年03月11日発行) P.45

稲葉 裕 (横浜市立大学医学部整形外科教授)

登録日: 2023-03-12

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 化膿性関節炎は,化膿菌が関節内に侵入し,増殖する疾患である。真菌性・結核性・淋菌性・ウイルス性関節炎とは起炎病原体,臨床症状・経過が異なり,区別して扱う必要がある。本疾患は乳幼児,高齢者,易感染性宿主に発症することが多い。
    感染経路として,血行性感染,周囲軟部組織や骨組織からの感染の波及,直接感染(関節内注射や手術操作,開放性の外傷など),の3つが挙げられ,血行性感染の頻度が最も高い。診断・治療が遅れた場合には,急速な関節破壊を引き起こし,永続的な関節機能障害をきたす可能性があるため,正確な診断に基づく早期治療が必要な疾患である。

    ▶診断のポイント

    急性に発症した単関節炎もしくは少関節炎では,化膿性関節炎の可能性を考慮して検査・診断を進めていく必要がある。糖尿病,副腎皮質ステロイドの服用,アルコール依存,悪性腫瘍,腎機能障害,肝機能障害,低栄養状態,human immunodeficiency virus(HIV)感染,高齢者(80歳以上)が,化膿性関節炎の罹患リスクを上昇させることが知られている。

    小児例では若年性特発性関節炎やその他の感染性関節炎との鑑別が,成人例では痛風・偽痛風などの結晶誘発性関節炎,変形性関節症,関節リウマチとの鑑別が重要である1)。また,軟部組織感染症である蜂窩織炎や壊死性筋膜炎との鑑別も必要である。

    【症状】

    典型例では,罹患関節の発赤,腫脹,疼痛,熱感および可動域制限を認める。深部関節では発赤,腫脹,熱感が明らかでない場合も多い。安静時や夜間においても疼痛を認め,新生児や乳児の場合では,患肢を動かさない仮性麻痺が特徴的である。発熱,悪寒,倦怠感などの全身症状を呈することもある。罹患部位では,膝関節が最多で,股関節,足関節,肘関節などがそれに続く。

    【検査所見】

    血液生化学検査で,白血球数の増加,好中球分画の増加,赤血球沈降速度(ESR)の遅延,C反応性蛋白(CRP)高値を認める。化膿性関節炎を疑う場合には関節穿刺を施行し,関節液検査(細胞数,細胞分画,結晶検査,グラム染色および細菌培養検査)を行う。化膿性関節炎では関節液は黄白色に混濁し,白血球数の増加を認めることが多い。画像検査では,MRIまたはCTにより関節腔内の液体貯留を確認する。MRIでは周囲軟部組織の炎症や,骨髄炎合併の有無の評価が可能である。

    残り1,278文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top