1 望まれる在宅輸血
・血液疾患をはじめ,輸血依存の患者にとって,少しでも長い間,住み慣れた地域で過ごすためには,地域における輸血実施の担い手の確保が重要である。
・在宅での輸血実施(在宅輸血)は,患者のQOLを大きく改善する可能性がある。
2 在宅輸血の適応
・『在宅赤血球輸血ガイド』(日本輸血・細胞治療学会)に基づいて考える。基本的には,輸血実施歴がありその際に大きな有害事象がなかったこと,全身状態が安定していることなどが規定されている。
3 在宅輸血を始めるには?(在宅輸血のスタートアップ)
・まず各地域の赤十字血液センターに連絡し,輸血実施医療機関の登録を行う。
・輸血前検査について,検査実施機関と所要時間など要件を確認する。
・連携先の訪問看護ステーション,またケアマネージャーとの間で事前相談を行う。
4 輸血前検査・輸血後検査・検体保存
・紹介元に輸血に関する検査データの提供を依頼する。
・輸血前検査としては,血液型,不規則抗体に加え,HBs抗原,HBs抗体,HBc抗体,HCV抗体,HCVコア抗原検査を行うことが求められる。
・輸血前検体として,血清または血漿2mL程度を-20℃以下で保管する。
・輸血後検査は必須ではなく,遡及検査ができるよう輸血前検体の保存が重要。
・輸血実施後,次回輸血前の採血では不規則抗体検査を実施しておく。
5 血液製剤の品質管理
・赤血球製剤はもちろん,血小板製剤についても温度管理は重要。
・院内での製剤保管に加えて,患者宅への搬送中の温度管理方法を検討しておく。血液搬送装置(ATR)などの活用も有効。
6 在宅輸血の流れ
・輸血前の状態確認,ルート確保,前投薬の投与,輸血の実施,開始後の状態観察,抜針,輸血後の状態観察を行っていく。
・車の運転も安全運転で! 振動は血液製剤に悪影響を与える可能性がある。
7 在宅輸血の課題と展望
・わずかな症例のためにソフト・ハード両面の準備が必要で,診療所側の負担が大きい。
・輸血に関するすべての判断が在宅医側にゆだねられており責任が重い。また輸血中止の判断が難しく,漫然と輸血を継続することにもなりかねない。
・在宅輸血を実施できる医療機関を探すのに難渋し,退院支援が進まないことが多い。
・在宅輸血についてのガイドラインの充実(既存の赤血球に加えて,血小板輸血,小児輸血などについて指針作成が進行中)。
・輸血管理加算・管理料など,診療報酬上のサポート。
・地域での輸血実施医療機関の可視化・トレーサビリティの確立,在宅輸血の実施システムの構築。
・在宅輸血を含む地域における輸血の担い手の普及をめざした研修会の開催・サポートの充実。