ガマ腫は舌下腺からの粘液漏出により生じる粘液貯留囊胞である。その存在部位から口腔底(舌下間隙)に限局する舌下型,顎舌骨筋を超え顎下部に進展する顎下型,両方に及ぶ舌下・顎下型に分類される。
舌下型ガマ腫は口腔底の一側に薄い被膜を持つ透光性の囊胞として認められる。一方,顎下型ガマ腫は顎下部の柔らかい無痛性腫瘤として生じる。
診断にはMRIが有用であり,口腔底や顎下部に単房性・辺縁整であるが,周囲臓器の圧排に応じていびつな形をした囊胞として認められる。内容液は粘性で,T1強調画像で低信号,T2強調画像で高信号を示す。本疾患の鑑別疾患として,皮様囊腫やリンパ管腫などの囊胞性疾患はMRIで類似の像を呈するが,ガマ腫はオトガイ舌骨筋をまたいで口腔底に嘴状に陰影が広がる(tail sign)のが特徴的とされている。
良性疾患であり経過観察も可能であるが,咀嚼や嚥下の障害,違和感などの口内症状や,顎下部腫脹などの訴えがあり,患者が希望すれば治療の対象となる。治療法には手術もしくはOK-432囊胞内注入療法がある。
根治的手術としては患側の舌下腺摘出術が推奨されている。かつては本疾患にガマ腫摘出術や開窓術がなされていたが,再発が多いことで見直され,現在では舌下型ガマ腫,顎下型ガマ腫いずれでも舌下腺のみを切除すればよいことが明らかとなった。ガマ腫は囊胞内腔の上皮を欠く偽囊胞であるため,囊胞を摘出する必要はないとされている。内容液を穿刺あるいは切開して排液すれば十分であり,それをせずとも舌下腺を摘出すれば残存する囊胞部分はやがては吸収され消失する。
手術以外の治療法としてOK-432囊胞内注入療法があり,もともとは囊胞状リンパ管腫での有用性が示された治療法1)であるが,ガマ腫にも応用され良好な結果が得られている2)。いずれの治療を行うかは現場の判断によると思われるが,OK-432囊胞内注入療法は外来にて施行可能であり,奏効した場合は手術が不要となるため,まずは試みてよい治療であると考えられる。OK-432囊胞内注入療法の保険適用についてはリンパ管腫にのみ認められていたが,2011(平成23)年9月28日の厚生労働省発出の「医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱いについて」において,OK-432(ピシバニールⓇ)に関してガマ腫が「使用事例を審査上認める」ものとして掲載され(保医発0928第1号),保険診療として施行可能となっている。
OK-432はベンジルペニシリンを含有するため,ペニシリンアレルギー症例には原則禁忌であり,注意が必要である。
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