フレイルは加齢とともに生理的予備能が低下してくる中で,身体的・精神心理的に脆弱性が高まる病態であり,要介護状態の前段階である。加齢とともに起こる様々な疾病・併存疾患の合併がフレイルのリスクとなっているが,栄養摂取,身体活動,運動習慣などもフレイル発症と関係がある。また,フレイル状態になると外的なストレス(感染症,事故,手術など)に対する脆弱性が亢進し,種々の健康障害(たとえば,ADLの低下,転倒,入院など)を起こしやすくなる。フレイルには身体的な要因だけではなく,精神心理的な要因,社会的な要因があり,これらが負のスパイラルを形成して,自立性の低下をもたらすが,可逆性があることも特徴であり,早期に診断して適切な介入を行うことが求められる。
加齢とともに筋力が衰え,疲れやすくなったり,特に体重を減らそうとしていないにもかかわらず,体重が徐々に減少するといった症状/症候がみられることがあるが,むろん鑑別診断は必要である。
検査所見に関しては,通常の血液検査などでは異常を認めることが少ないが,握力が低下したり,歩行速度が遅くなるといった所見がみられることがある。握力の基準は男性28kg未満,女性18kg未満が握力低下,歩行速度は男女とも通常歩行速度が1.0m/秒未満が歩行速度低下である。
一般的に高齢者は活動量が低下するため,栄養摂取量も少なくてよいと考えがちであるが,実際には蛋白質の摂取量の低下がフレイルのリスクを上げることが明らかになっており,適切な栄養摂取はきわめて重要である。高齢者においては様々な疾病を合併していることが多く,塩分制限などが課せられている場合があり,それによる食欲低下や加齢に伴う食欲低下がみられることがあるため,注意が必要である。疾病の管理を適切に行いつつ,重症の腎機能障害がない場合には,蛋白質摂取量1.0〜1.2g/kg/日を勧めるべきである。また,ビタミンD不足にも陥りやすいため,適度な日光への曝露とともに20~30μg/日の摂取を促す。いずれにせよ,管理栄養士との連携が重要である。
適切な身体活動も重要である。コロナ禍において身体活動量が約30%減少したとの報告もあるが,1日30分程度の有酸素運動に加えて,週2~3回のレジスタンス運動が推奨されている。具体的なメニューについては成書を参照されたい。
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